Jenkins 調査レポート

開発元: CloudBees, Inc. and the Jenkins community
カテゴリ: CI/CD

ビルド、テスト、デプロイを自動化する、拡張性の高いオープンソースのCI/CDサーバー。

総合評価
80点
基準点70点からの評価
オープンソース
OSS
無料プラン
あり
最低価格
無料
対象ユーザー
開発者DevOpsエンジニア品質保証(QA)チーム
更新頻度
🆕 最新情報: Java 21必須化、UIの近代化、バグ報奨金プログラムの開始

📋 評価の詳細

👍 加点項目

  • +10 2000以上のプラグインによる圧倒的な拡張性と柔軟性
  • +5 無料で利用できるオープンソースであり、オンプレミス運用に最適
  • +3 UIの近代化が進行中で、ユーザビリティが改善されつつある

👎 減点項目

  • -5 サーバー設定やプラグイン管理など、運用コストが高い
  • -3 SaaS型ツールと比較して学習コストが高い
総評: 運用コストは高いが、圧倒的な拡張性とオンプレミスでの制御性を求めるなら依然として最強のツール

Jenkins 調査レポート

1. 基本情報

  • ツール名: Jenkins
  • ツールの読み方: ジェンキンス
  • 開発元: CloudBees, Inc. and the Jenkins community
  • 公式サイト: https://www.jenkins.io/
  • 関連リンク:
  • カテゴリ: CI/CD
  • 概要: Jenkinsは、オープンソースのオートメーションサーバーです。ソフトウェア開発におけるビルド、テスト、デプロイといったプロセスを自動化し、継続的インテグレーション(CI)と継続的デリバリー(CD)を実現します。2000を超える豊富なプラグインにより、あらゆる開発環境やツールと連携できる高い拡張性を誇ります。

2. 目的と主な利用シーン

  • 解決する課題: ソフトウェア開発ライフサイクルにおける手動での反復的なタスクを自動化し、開発の効率性、品質、スピードを向上させること。ビルド、テスト、デプロイの各段階で発生する人的ミスを削減します。
  • 想定利用者: ソフトウェア開発者、DevOpsエンジニア、QAエンジニア、IT運用担当者。
  • 利用シーン:
    • ソースコードの変更をトリガーとした自動ビルドと単体テストの実行
    • Dockerイメージのビルドとコンテナレジストリへのプッシュ
    • 複雑な承認フローを含むデプロイパイプラインの構築
    • 定期的なバッチ処理やインフラプロビジョニングの自動化

3. 主要機能

  • パイプライン・アズ・コード: Jenkinsfile という設定ファイルに、ビルド、テスト、デプロイの手順をコードとして記述できる。
  • 豊富なプラグイン: 2000以上のプラグインが利用可能で、Git、Maven、Docker、Kubernetes、Slackなど、ほぼすべての開発・運用ツールと連携できる。
  • 分散ビルド: 複数のマシン(エージェント)にビルドやテストの処理を分散させ、大規模なプロジェクトでも迅速な処理を実現する。
  • Web UIによる管理: ブラウザベースのUIから直感的にジョブの設定や実行結果の確認が可能。近年はUIの近代化が進んでいる。
  • REST API: 外部のシステムからジョブの実行やビルド情報の取得などをプログラム経由で行うためのAPIが提供されている。
  • セキュリティ管理: ユーザー認証、認可、クレデンシャル管理機能を備え、セキュアなパイプライン実行をサポート。

4. 開始手順・セットアップ

  • 前提条件:
    • Java 21以上(バージョン2.545以降で必須)
    • Linux, Windows, macOSなどのOS環境、またはDocker環境
  • インストール/導入:
    # Dockerを使用したインストール例
    docker run -p 8080:8080 -p 50000:50000 jenkins/jenkins:lts
    
  • 初期設定:
    • ブラウザでアクセスし、初期管理者パスワードを入力してアンロック。
    • “Install suggested plugins” を選択して基本プラグインを導入。
    • 管理者ユーザーの作成。
  • クイックスタート:
    • “New Item” から “Pipeline” ジョブを作成し、サンプルスクリプトを実行して動作確認。

5. 特徴・強み (Pros)

  • 圧倒的な柔軟性と拡張性: 2000以上のプラグインにより、ニッチなツールやレガシーシステムとの連携、独自のワークフロー構築など、あらゆる要件に柔軟に対応できる。
  • オンプレミスでの完全な制御: 自社のインフラ上でJenkinsをホストできるため、セキュリティ要件が厳しいプロジェクトや、外部サービスへのアクセスが制限される環境でも利用しやすい。
  • 長年の実績と巨大なコミュニティ: 世界中で広く利用されているため、ドキュメント、チュートリアル、フォーラムなどの情報が豊富で、問題解決がしやすい。
  • UIの近代化: 長年の課題であった古風なUIが刷新されつつあり、パンくずリストやテスト結果画面などのユーザビリティが向上している。

6. 弱み・注意点 (Cons)

  • 管理・運用コスト: サーバーのセットアップ、OSやJavaのアップデート(特にJava 21への移行など)、プラグインの依存関係管理など、運用担当者の負担が大きい。
  • 複雑化しやすい設定: 柔軟性が高い反面、ジョブやパイプラインが増えるにつれて設定が複雑化し、メンテナンスが属人化しやすい。
  • 学習コストの高さ: 多機能なため、全ての機能を使いこなすには相応の学習が必要。特に Jenkinsfile (Groovy) の記述にはプログラミング知識が求められる。
  • SaaSのような手軽さがない: GitHub Actionsのように「設定ファイルを置くだけ」では動かず、サーバー構築が必須となる。

7. 料金プラン

Jenkinsはオープンソースソフトウェア(OSS)であり、すべての機能を無料で利用可能です。エンタープライズ向けには、CloudBees社が商用版を提供しています。

プラン名 料金 主な特徴
Jenkins (OSS) 無料 全機能を利用可能。コミュニティによるサポート。
CloudBees CI 要問い合わせ OSS版Jenkinsをベースに、安定性の高いビルド、高度な管理機能、専門家によるテクニカルサポートを追加した商用版。
  • 課金体系: (CloudBees CIの場合) ユーザー数やエージェント数に応じた年間サブスクリプションが一般的。
  • 無料トライアル: CloudBees CIには無料トライアルが存在する。

8. 導入実績・事例

  • 導入企業: Netflix, Facebook, eBay, LinkedIn, Nintendo, SONYなど、多数のグローバル企業で採用実績がある。日本国内でも、Yahoo! JAPAN, 楽天, NTTグループなど、多くの企業で利用されている。
  • 導入事例: ビルド・デプロイ時間の短縮、手動作業の削減によるヒューマンエラーの防止、開発サイクルの高速化、品質向上などの効果が報告されている。
  • 対象業界: 業界を問わず、スタートアップから大企業まで、あらゆる規模のソフトウェア開発組織で導入されている。

9. サポート体制

  • ドキュメント: 公式サイトで包括的なドキュメントが提供されており、インストール、設定、パイプライン作成など、幅広い情報が網羅されている。
  • コミュニティ: Jenkinsコミュニティは非常に活発で、メーリングリスト、フォーラム、Stack Overflowなどでユーザー同士のQ&Aが頻繁に行われている。
  • 公式サポート: オープンソース版には公式サポートはないが、CloudBees社の商用版では専門家によるサポートが受けられる。

10. エコシステムと連携

10.1 API・外部サービス連携

  • API: Jenkinsは、外部からジョブの実行やビルド情報の取得などを行うための豊富なREST APIを提供している。
  • 外部サービス連携: ソースコード管理(GitHub, GitLab)、チャットツール(Slack, Teams)、クラウド(AWS, Azure, GCP)、コンテナ(Docker, Kubernetes)など、プラグインを通じてほぼ全てのツールと連携可能。

10.2 技術スタックとの相性

技術スタック 相性 メリット・推奨理由 懸念点・注意点
Java Jenkins自体がJava製であり、Maven/Gradle連携が強力。 特になし
Docker Docker AgentやDocker Pipelineプラグインにより、クリーンな環境でのビルドが容易。 Docker in Dockerのセキュリティリスク管理が必要。
Kubernetes Kubernetesプラグインで動的にエージェントポッドを生成可能。 K8sクラスターの管理知識が必要。
Python/Node.js 任意のランタイムをエージェントにインストールすれば実行可能。 環境構築の手間がかかる(Docker利用推奨)。

11. セキュリティとコンプライアンス

  • 認証: Jenkins独自のユーザーDBに加え、LDAP, Active Directory, SAML, OIDCなど多様な認証プロバイダと連携可能。
  • データ管理: ビルド成果物や設定ファイルはJenkinsサーバー内に保存される。オンプレミス運用により、データの保存場所を自社で完全に管理できる。
  • 準拠規格: Jenkins自体は特定の認証を持たないが、オンプレミス環境に構築することで、組織独自のセキュリティポリシーやコンプライアンス基準に準拠した運用が可能。最近ではCSP (Content-Security-Policy) 対応の強化など、セキュリティ機能の改善が続いている。

12. 操作性 (UI/UX) と学習コスト

  • UI/UX: 従来は「古くて使いにくい」と言われてきたが、近年のアップデートでヘッダーデザインの刷新、アイコンのSVG化、パンくずリストの改善、テスト結果画面のモダン化などが行われ、使い勝手が向上している。
  • 学習コスト: シンプルなジョブ作成は容易だが、運用管理や複雑なパイプライン記述、プラグイン選定など、極めるには高い学習コストがかかる。

13. ベストプラクティス

  • 効果的な活用法 (Modern Practices):
    • Pipeline as Code: GUIでジョブを設定せず、必ず Jenkinsfile で管理しバージョン管理する。
    • Dockerエージェントの利用: ビルド環境をDockerコンテナ化し、ホスト環境を汚さず再現性を確保する。
    • Configuration as Code (JCasC): Jenkins自体の設定もコード化(JCasCプラグイン)し、サーバー構築を自動化する。
  • 陥りやすい罠 (Antipatterns):
    • GUIでの直接設定: 再現性がなく、設定変更の履歴も残らないため避けるべき。
    • マスターノードでのビルド実行: セキュリティとパフォーマンスの観点から、ビルドは必ずエージェントノードで実行する。
    • プラグインの入れすぎ: 不要なプラグインは依存関係の競合やセキュリティリスクの原因となるため、必要最小限に留める。

14. ユーザーの声(レビュー分析)

  • 調査対象: G2, ITreview
  • 総合評価: 4.4/5.0 (G2)
  • ポジティブな評価:
    • “プラグインを使えば実現できないことはほぼない。拡張性は随一。”
    • “オンプレミスで完全にコントロールできるため、閉域網での利用に最適。”
    • “無料でありながらエンタープライズ級の機能を持っている。”
  • ネガティブな評価 / 改善要望:
    • “サーバーのメンテナンスが大変。プラグインのアップデートで動かなくなることがある。”
    • “UIが古臭く、モダンなCIツールに比べると直感的ではない(改善されつつあるが)。”
    • “設定が複雑で、初心者が躓きやすい。”
  • 特徴的なユースケース:
    • 一般的なCI/CDだけでなく、定期的なスクリプト実行基盤や、レガシーシステムとの連携ハブとして活用されている。

15. 直近半年のアップデート情報

  • 2026-01-19 (2.547): ディレクトリブラウザのパンくずリストに表示名を使用するよう改善。
  • 2026-01-05 (2.545): Java 21が実行環境として必須化。Java 11/17でのサポート終了。
  • 2025-12-23 (2.543): Linuxパッケージ用のGPG署名キーが更新(セキュリティ強化)。
  • 2025-11-25 (2.539): Jenkins UIに対するContent-Security-Policy (CSP) 保護の設定が可能に。
  • 2025-11-18 (2.537): Red HatおよびopenSUSEのRPMパッケージが統合され、リポジトリURLが変更。
  • 2025-10-16: テスト結果UIの大幅な刷新(JUnitプラグイン等)。

(出典: Jenkins Changelog)

16. 類似ツールとの比較

16.1 機能比較表 (星取表)

機能カテゴリ 機能項目 Jenkins GitHub Actions GitLab CI/CD CircleCI
基本機能 セットアップ
サーバー構築要

YAMLのみ

GitLabなら容易

SaaSで容易
統合 リポジトリ連携
プラグインで対応

GitHubネイティブ

GitLab完全統合

GitHub/BB連携
拡張性 プラグイン
圧倒的数

Marketplace

コンテナベース

Orbs
実行環境 オンプレミス
完全制御可能

Self-hosted Runner

Runner

Runner
非機能要件 日本語対応
UI/情報豊富

ドキュメント充実

一部英語

英語中心

16.2 詳細比較

ツール名 特徴 強み 弱み 選択肢となるケース
Jenkins 拡張性重視のOSS CIサーバー 圧倒的なカスタマイズ性、オンプレミスでの完全な制御、コスト(無料) 運用管理の負担、学習コスト、サーバー構築が必要 自社インフラで運用したい、複雑なワークフローが必要、コストを抑えたい場合
GitHub Actions GitHub統合型CI/CD 導入の容易さ、GitHubとのシームレスな統合、メンテナンスフリー(SaaS) 複雑なフローの可読性、ログ閲覧のUX GitHubを利用しており、手軽にCI/CDを始めたい場合(第一候補)
GitLab CI/CD GitLab統合型オールインワン GitLabとの完全統合、DevOps全般をカバー GitLabへの依存、UIの多機能さによる複雑性 GitLabを利用しており、ツールチェーンを統一したい場合
CircleCI クラウド特化型CI ビルドの高速性、デバッグ機能(SSH接続など)、安定性 無料枠の制限、設定ファイルの管理が別 ビルドスピードとデバッグ効率を最優先する場合

17. 総評

  • 総合的な評価: Jenkinsは、長年にわたりCI/CDの代名詞として君臨してきたツールであり、その地位は依然として揺るがない。特に「何でもできる」拡張性と、オンプレミス環境での「完全な自由」は他のSaaS型ツールにはない強みである。Java 21への移行やUIの近代化など、時代に合わせた進化も続けている。しかし、サーバー管理の負担は避けられず、手軽さを求めるモダンな開発チームにはGitHub Actionsなどが適している場合も多い。
  • 推奨されるチームやプロジェクト:
    • セキュリティ要件により、オンプレミスや閉域網での運用が必須なプロジェクト。
    • 非常に複雑で特殊なビルド/デプロイフローを構築する必要があるチーム。
    • ツール自体の利用料を無料に抑えたい組織。
  • 選択時のポイント: 「運用の手間をかけてでも、自由度とコントロール権を手に入れたいか」が最大の分かれ道となる。インフラ管理のリソースがあり、高度なカスタマイズを求めるならJenkinsは最高のパートナーとなる。逆に、インフラ管理をしたくない場合はSaaS型ツールの検討が推奨される。