年金制度改革の最新動向：【社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案】詳解

作成日: 2025年06月01日

年金制度改革の最新動向：【社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案】詳解

はじめに

本報告書は、日本の年金制度における最新の改革動向、特に2025年（令和7年）の第217回通常国会に提出された「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」（以下、「2025年改正法案」と呼称する場合がある）に焦点を当て、その具体的な変更内容と影響について専門的な観点から詳解することを目的とします。1

少子高齢化の急速な進展、働き方の多様化（パートタイム、フリーランス、再雇用など）、そして人生100年時代といわれる長寿化は、日本の公的年金制度に構造的な変革を迫っています。1 これまでの制度の枠組みでは対応しきれない「制度の谷間」が生じ、国民の制度への納得感や公平性の確保も喫緊の課題となっています。10 2025年改正法案は、こうした社会経済の変化に対応し、誰もが働き方に応じて保障され、高齢期の生活基盤を充実させることを目指すものです。1

令和2年（2020年）改正法 8 を含む一連の改革は、一過性の修正ではなく、深刻な人口動態の変化と労働市場の変容に対応するための継続的かつ反復的なプロセスと捉えることができます。その焦点は、標準化されたライフサイクルモデルから、個々人の多様な生き方に対応できる制度へと移行しつつある点にあります。実際に、法案の目的や概要説明においては、「社会経済の変化への対応」、「多様な働き方」、「より長期にわたる就労」といった文言が一貫して用いられており 1、いくつかの施策の段階的導入（例えば企業規模要件の段階的廃止 4）や、国民年金拠出期間の強制延長といった議論の的となりやすい項目の見送り 17 は、長期的な視点に立った漸進的な調整戦略を示唆しています。これは、将来の年金制度改革も、引き続きこの適応的な軌道を進む可能性が高いことを意味します。

I. 年金制度改革の主要な柱

A. 短時間労働者への被用者保険（厚生年金）適用拡大

「106万円の壁」の撤廃（賃金要件の廃止）

これまで、パートタイム労働者などが厚生年金および健康保険に加入する際には、月額賃金が8.8万円（年収約106万円）以上であるという要件が存在しました。8 この、いわゆる「106万円の壁」は、就業調整、すなわち労働時間や収入を意図的に抑制する行動の一因と指摘されてきました。9 最新の2025年改正法案では、この賃金要件を撤廃し、所得に関わらず週の所定労働時間が20時間以上である場合は原則として社会保険に加入するという方向性が示されています。1 この改正の施行は、法律の公布から3年以内とされています。4

企業規模要件の段階的廃止

被用者保険の適用対象となる事業所の企業規模要件（従業員数）も、段階的に引き下げられ、最終的には撤廃される予定です。令和2年改正法においては、従業員数500人超の企業から、令和4年10月には100人超、令和6年10月には50人超の企業へと適用範囲が拡大されました。8 2025年改正法案ではこの流れをさらに推し進め、2027年10月に「35人超」、2029年10月に「20人超」、2032年10月に「10人超」、そして最終的には2035年10月には10人以下の企業にも適用が拡大される計画です。1

個人事業所における非適用業種の解消

従来、常時5人以上を雇用する個人事業所であっても、農業・林業・漁業、宿泊業、飲食サービス業、理美容業といった一部の業種は、社会保険の適用除外とされていました。4 2025年改正法案では、これらの非適用業種が解消され、原則として全ての業種が適用対象となります。施行は令和11年10月1日が予定されていますが、既存の事業所については経過措置が検討されています。4

影響と支援措置

これらの適用拡大により、約200万人 7 とも推計される短時間労働者などが新たに厚生年金に加入することになり、将来の年金受給額の増加や、障害・遺族保障の充実といったメリットが期待されます。4 一方で、新たに保険料負担が発生するため、手取り収入の一時的な減少を緩和する措置として、制度施行から3年間に限り、労働者の標準報酬月額に応じて保険料負担割合を軽減する特例や、事業主へのキャリアアップ助成金を通じた経済的支援も盛り込まれています。4

この広範な適用拡大は、雇用形態に関わらず全ての労働者に被用者年金の恩恵を広げようとする政策の根本的な転換を示しています。「106万円の壁」が就労拡大を妨げ、不公平感を生んできたことは長らく指摘されてきました。9 この壁の撤廃に加え、企業規模要件や非適用業種の解消 1 は、より多くの労働者をより手厚い厚生年金制度の傘下に取り込むという明確な意図の表れです。「能力に応じた働き方」10 や「働きに応じた保障」10 を可能にするという政府の目標も、この方向性を裏付けています。

しかしながら、この適用拡大は、特に中小企業にとって財政的・事務的負担の増加をもたらす可能性が高いと考えられます。従業員にとって有益である一方、中小企業は新たに適用対象となるパートタイム労働者に対する社会保険料の事業主負担分や、関連する事務作業の増加に直面します。段階的な導入 4 や助成金などの支援措置 6 はこの影響を緩和するために設計されていますが、中小企業の競争力や雇用戦略への短期的な影響については、慎重な経過観察が必要です。

B. 在職老齢年金制度の見直し

支給停止調整額の変更

65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者を対象として、年金と給与・賞与の合計額が一定基準を超過した場合に年金の一部または全部が支給停止される在職老齢年金制度について、その基準額（支給停止調整額）が見直されます。2024年度（令和6年度）には、この基準額が48万円から50万円に引き上げられました。21 2025年改正法案では、この基準額を現行の50万円（令和6年度価格）から62万円に引き上げることが提案されています。1 この改正は、令和8年4月1日からの施行が予定されています。2

なお、令和2年改正法では、60歳から64歳を対象とした在職老齢年金（低在老）の基準額が28万円から47万円に緩和され（令和4年4月施行）、65歳以上の在職者については、毎年10月にそれまでの保険料納付実績を年金額に反映する「在職定時改定」が導入されています。8

就労する高齢者への影響

基準額の引き上げにより、年金カットの対象となる高齢者が減少し、より多くの収入を得ても年金が減額されにくくなります。これは高齢者の就労意欲を促進し、働き方に中立的な制度を目指すものです。1 厚生労働省の試算によれば、この見直しにより約20万人が新たに老齢厚生年金を全額受給可能になるとされています。4

基準額の引き上げは就労を奨励する一方で、年金制度にとっては短期的なコスト増を意味します。制度自体の廃止可能性に関する議論（21 などで言及）は、高齢者の雇用促進と将来世代のための年金制度の長期的な持続可能性確保という、二つの要請間の根本的な緊張関係を浮き彫りにしています。今回の改正は制限緩和の一歩であり、完全な撤廃には至っていません。収入基準額を50万円から62万円へ引き上げる 1 ことは、年金カットを減らすことで就労する高齢者に直接的な利益をもたらします。しかし、21 では制度の完全廃止が財政に与える影響について議論されており、現行の年金受給者への支払いは増えるものの、将来の給付水準が低下する可能性が指摘されています。このことから、62万円という基準額は、就労インセンティブと財政的懸念のバランスを取った妥協案であると考えられます。厚生労働省自身の分析 4 によれば、この特定の変更による給付水準への影響はマイナス0.2%とされていますが、法案全体としてはプラスの影響を目指しています。

C. 遺族年金制度の改正

男女差の是正と有期給付の導入

子のいない配偶者への遺族厚生年金について、男女間の支給要件の差異を解消する目的で、原則として5年間の有期給付とする見直しが行われます。1 具体的には、18歳未満の子がいない20歳から50代の配偶者（これまでは対象外とされていた60歳未満の夫も含む）が対象となります。2

配慮措置（有期給付加算、死亡時分割等）

支給期間が短縮されることへの配慮として、有期給付の対象者には「有期給付加算（仮称）」により年金額が増額されるほか、「死亡時分割（仮称）」制度が創設され、亡くなった配偶者の厚生年金加入期間を遺族の老齢厚生年金に上乗せできるようになります。4 また、低所得など生活困窮の場合には最長65歳までの延長支給も認められます。4

収入要件の廃止と中高齢寡婦加算の見直し

遺族厚生年金の受給における年収要件（現行850万円）が撤廃されます。4 中高齢寡婦加算は段階的に見直される予定です。4

施行時期

これらの遺族年金に関する改正は、令和10年4月1日からの施行が予定されています。4

遺族給付を有期化する方向への転換は、たとえ「死亡時分割」や「有期給付加算」といった補完的措置が講じられるとしても、遺族配偶者の長期的な経済設計のあり方を根本的に変えるものです。これまで一部の遺族にとって終身の所得保障となり得た国の役割が縮小し、個々人による退職後の所得準備や生命保険等を通じた備えの重要性が一層高まることを意味します。終身給付の可能性があった制度から5年間の有期給付 1 へと移行することは、多くの遺族にとって国からの直接的な支援に明確な終期が設定されることを意味します。「死亡時分割」4 や「有期給付加算」4 はその補填を目的としていますが、影響を受ける全ての個人にとって、無期限の支払いを完全に代替するものではない可能性があります。これは、個人が私的手段を通じて遺族所得を積極的に計画する必要性が高まることを示唆しています。

D. 標準報酬月額の取り扱い変更

厚生年金保険における標準報酬月額上限の段階的引き上げ

厚生年金の保険料や将来の年金額の計算基礎となる標準報酬月額の上限が、現行の65万円から段階的に75万円に引き上げられます。1 具体的なスケジュールは、令和9年9月に68万円、令和10年9月に71万円、令和11年9月に75万円となる予定です。1

改正の趣旨と影響

これは、負担能力に応じた保険料負担を求め、将来の給付を充実させる観点からの改正です。2 報酬月額が66万5千円以上の被保険者は保険料が増加しますが、その分、将来の報酬比例部分の年金増額につながります。4 厚生年金全体の給付水準も上昇するとされています。2

標準報酬月額の上限引き上げは、年金制度にとって高所得者を対象とした「緩やかな」歳入増策の一形態と言えます。「能力に応じた負担」2 という明確な目的は、高所得者のより多くの貢献を意味します。これにより自身の将来の年金（報酬比例部分）が増加する 4 一方で、増加した歳入の一部は制度全体の財政を支え、低所得者層に恩恵をもたらしたり、制度の持続可能性を向上させたりする可能性があります。2 これは、高所得層における年金制度の再分配のあり方について議論を呼ぶ可能性があります。

E. 私的年金制度の改正

iDeCo（個人型確定拠出年金）の加入可能要件の見直し

iDeCoの加入可能年齢の上限が、現行の60歳未満から70歳未満に引き上げられます。1 老齢給付金をまだ受給していない等の条件を満たせば、60歳以降も掛金の拠出を継続できるようになります。2 この改正の施行は、公布から3年以内の政令で定める日とされています。2
また、2024年12月からは、企業型DCとDB（確定給付企業年金）等を併用している場合のiDeCoの拠出限度額も変更されます。32

その他関連する改正（企業型DC、情報開示等）

企業型DCのマッチング拠出における加入者掛金の上限（事業主掛金額を超えられない）が撤廃されます。2 簡易型DC制度は企業型DCに統合されます。2 さらに、企業年金の運用状況に関する情報開示（見える化）も進められます。2

iDeCoをはじめとする私的年金制度の拡充は、公的年金だけでは将来の退職後の生活資金が十分でない可能性を認識し、退職後の生活設計における個人の責任をより重視する政府の方針を反映しています。iDeCoの加入可能年齢を70歳に引き上げること 1 や、確定拠出年金の拠出限度額を拡大すること 2 は、個人の貯蓄を奨励するための直接的な措置です。これはしばしば退職後の「選択肢」を増やすものとして説明されますが 8、暗黙のうちに十分な老後所得を確保する責任の一部を国から個人へと移行させるものでもあります。

II. その他の重要な改正点と検討事項

A. 子の加算・配偶者加給年金の見直し

子の加算の増額

子を扶養する年金受給者への経済的支援を強化する観点から、老齢・障害・遺族年金における子の加算額が一律で年額28万1,700円に引き上げられるなど、拡充が図られます。1

配偶者加給年金の見直し

年下の配偶者に対する老齢厚生年金の配偶者加給年金は、新たに受給する人を対象に加算額が縮小されます（例えば、年額36万7,200円に）。4 これは、年金制度を「世帯単位」から「個人単位」へと見直す大きな流れの一環と位置づけられています。10

施行時期

これらの加算制度に関する改正は、令和10年4月1日からの施行が予定されています。4

扶養手当の再構築（子の加算増額と新規受給者への配偶者加算減額）は、子育て支援を優先し、伝統的な退職後の配偶者扶養モデルから脱却するという政策転換を明確に示しています。子の加算の増額 1 と、新規受給者に対する配偶者加算の減額 4 は、資源の直接的な再配分です。「世帯単位」から「個人単位」への年金思考への移行 10 という根拠は、配偶者がますます自身の年金受給権を構築することが期待されていることを示唆しており、これは世帯の財務計画や退職所得におけるジェンダー平等に長期的な影響を与える可能性があります。

B. 外国人の脱退一時金制度の変更点

請求制限と支給上限年数の延長

再入国の許可を受けて出国した外国人については、当該許可の有効期間内は脱退一時金を請求できないこととされます。1 また、脱退一時金の支給対象となる加入期間の上限が5年から8年に延長されます。1

施行時期

請求制限に関する改正は、公布から4年以内の政令で定める日から施行されます。4

これらの変更は、一時的な出国者による制度の濫用防止と、より長期間貢献した外国人労働者に対する公正な処遇とのバランスを取ろうとする試みであり、日本の労働力の国際化が進んでいることを反映しています。再入国許可を持つ者に対する請求制限 1 は、一時金を受給してすぐに日本に戻るという懸念に対応するものです。支給対象となる拠出期間の上限を5年から8年に延長すること 1 は、一部の外国人がより長期間拠出しており、恒久的に出国する場合にはそれに見合ったより大きな払い戻しを受けるに値することを認めるものです。

C. 国民年金保険料拠出期間延長に関する議論の現状

強制加入期間の延長は見送り

国民年金の保険料拠出期間（強制加入期間）を現行の40年（20歳から59歳まで）から45年（20歳から64歳まで）に延長する案は、2024年の財政検証のオプション試算には含まれていましたが、国民負担の増加に対する懸念などから、2025年改正法案の主要な義務的改正項目としては見送られました。1

高齢任意加入制度の対象拡大

一方で、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない者や年金額を増やしたい者のために、65歳以降も国民年金に任意で加入できる「高齢任意加入制度」の対象者が拡大されます（例えば、昭和50年4月1日までに生まれた者へ対象を拡大）。1

基礎年金の給付水準向上に繋がりうる強制加入期間の延長が見送られたことは、国民負担の直接的な増加に対する政治的な強い慎重さを示しています。複数の資料が、40年から45年への強制加入期間延長が2025年改正で見送られた、あるいは断念されたと明記しています。6 その理由としては、国民の負担感への配慮 18 や、他の要因による財政見通しの改善 13 が挙げられています。任意加入制度の拡充は、より論争の少ない代替案ですが、任意加入を選択できない、あるいは選択しない人々の年金額の十分性の問題には対応できず、老後所得の格差を拡大させる可能性があります。

D. 基礎年金の底上げ措置とマクロ経済スライド調整期間の一致

法案の付則における「基礎年金の底上げ措置」

2025年改正法案には、与野党間の協議の結果、「基礎年金の底上げ措置」に関する規定が付則に盛り込まれました。15 この措置は、2029年に予定されている次期財政検証において、将来の基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合に実施を検討するとされています。

具体的な仕組み（マクロ経済スライド調整期間の一致）

提案されている具体的な仕組みは、厚生年金の積立金を活用して、国民年金（基礎年金）のマクロ経済スライドによる調整期間を短縮するというものです。13 現状では、基礎年金の調整期間は厚生年金のそれよりも大幅に長いと見込まれていますが、この「調整期間の一致」により、両方の調整期間を2036年頃に終了させることを目指します。

財源と世代間の影響

主な財源は厚生年金の積立金です。15 これにより、厚生年金の調整期間が一時的に延長される可能性があります。基礎年金の給付抑制が早期に終了することで、若年世代や基礎年金が主たる収入源となる層（自営業者、一部の非正規雇用者、就職氷河期世代など）が恩恵を受けると期待されています。一方で、現在厚生年金を受給している高齢者の一部には、全体の制度がより高い基礎年金水準で安定するまでの間、わずかな一時的減額が生じる可能性も指摘されています。

マクロ経済スライド期間の一致を通じた「基礎年金の底上げ措置」が、2029年の財政検証結果次第で導入されるという条件付きではあるものの、法案に盛り込まれたことは、基礎年金の十分性に対処するための重要な一歩と言えます。現行の積立金を活用することで、直ちに保険料を引き上げることなく、世代間の公平性のバランスを取ろうとする試みです。積立金の活用と調整期間の一致は、複雑なバランスの上に成り立っています。

この措置が2029年の財政検証に依存するという条件付きであることは、実質的な年金改革の実施における継続的な政治的・財政的課題を浮き彫りにし、不確実性を生み出しています。その成功は、将来の経済状況と政治的意思にかかっています。これは、長期的な計画や制度への信頼にとって重要な意味を持ちます。

III. 施行時期のまとめ

2025年改正法案における主要な改正点の施行時期（予定を含む）は以下の通りです。

IV. 結論

2025年改正法案は、変化する社会経済情勢の中で、日本の年金制度が直面する課題に対応するための重要な一歩と評価できます。主な柱として、短時間労働者への被用者保険の適用拡大、在職老齢年金制度の見直し、遺族年金制度の男女差是正、標準報酬月額上限の引き上げ、そして私的年金制度の拡充が挙げられます。これらの改正は、より多くの人々が年金制度の恩恵を受けられるようにし、就労形態や性別による格差を是正し、高齢期の就労を促進するとともに、個人の自助努力による老後資金形成を後押しすることを意図しています。

国民生活への影響は多岐にわたります。短時間労働者にとっては、厚生年金への加入により将来の年金受給額増加や保障の充実というメリットがある一方、保険料負担という新たな課題も生じます。在職老齢年金制度の見直しは、働く高齢者の手取り収入増加に繋がり、就労意欲を刺激する効果が期待されます。遺族年金制度の改正は、男女間の公平性を高める一方で、特に子のいない配偶者にとっては、有期給付化により個別の生活設計の見直しが求められる可能性があります。私的年金制度の拡充は、個人の選択肢を広げ、老後資金準備における自己責任の重要性を増すものと言えるでしょう。

また、国会審議の過程で付則に盛り込まれた「基礎年金の底上げ措置」は、2029年の財政検証結果次第という条件付きではあるものの、基礎年金の十分性という長年の課題に取り組む姿勢を示した点で注目されます。マクロ経済スライドの調整期間の一致という具体的な手法が検討されており、これが実現すれば、特に基礎年金に依存する層の将来的な年金水準の改善に繋がり得ます。

しかしながら、国民年金保険料の強制加入期間の延長が見送られたことや、基礎年金の底上げ措置が将来の財政検証に委ねられたことは、年金制度の持続可能性と給付水準の確保という根本的な課題が依然として残されていることを示しています。今後の財政検証の結果や、それに基づく政治的な合意形成が、年金制度の長期的な安定と国民の信頼にとって極めて重要となります。これらの改革は、一度きりのものではなく、社会の変化に合わせて継続的に見直されていくべき性格のものであり、今後の動向を引き続き注視していく必要があります。

引用文献

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3. 社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための 国民年金法等の一部を改正する等の法律案について - 第一生命 年金通信, 6月 1, 2025にアクセス、 https://nenkintsushin.dai-ichi-life.co.jp/download.php?c=2029
4. 社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案の概要 - 厚生労働省, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001490414.pdf
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6. 2025年5月29日(木) 年金制度改革の申し入れについて｜ニュース｜活動情報 - 日本維新の会, 6月 1, 2025にアクセス、 https://o-ishin.jp/news/2025/05/29/16925.html
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8. 年金制度改正法（令和２年法律第40号）が成立しました - 厚生労働省, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html
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37. 年金財政検証から見る年金制度改正の論点—連載コラム「税の交差点」第121回 - 東京財団, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=4549
38. 2024 年の年金財政検証の結果と 2025 年の年金制度改正の方向性, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.jri.co.jp/file/report/other/pdf/15311.pdf
39. 令和６(2024)年財政検証結果の概要, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.mhlw.go.jp/content/001270476.pdf
40. 【LIVE】年金改革法案修正案 衆厚労委可決 衆院通過の見通し（2025年5月30日） - YouTube, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=L8eX56xtMts
41. 次期年金制度改正に向けた 基本的見解, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/064_gaiyo.pdf
42. 多様なライフスタイルに対応年金制度改革法案が衆院通過 お知らせ …, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.jimin.jp/news/information/210701.html
43. 年金制度改革法案が衆議院で可決 「基礎年金の底上げ」で現在63歳以上の男性と67歳以上の女性は受給額“マイナス”に シニア世代からは不満、“就職氷河期”世代は「手取り増やして」 - FNNプライムオンライン, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.fnn.jp/articles/-/879867
44. 最近のうごき（厚生労働省関連トピックス） - 中谷社会保険労務士事務所, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.zinzi-nakatani.jp/131369330
45. 【年金】2025年金改正 今話題の基礎年金底上げ案とは【社労士解説】立憲民主党案 - YouTube, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=vbBGkb8Hn-U
46. 【国会中継】衆院厚生労働委員会 「年金改革法案」に対する質疑（2025年5月21日） - YouTube, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=zIbLsJaflbA
47. 基礎年金の底上げ、損する人・得する人【2025年年金改革法案】 - FPナナコの部屋, 6月 1, 2025にアクセス、 https://mamasuma.com/nenkin-choseikikan/
48. 国民年金法改正案 減らない年金の実現を 修正案と討論 2025.5.30 - YouTube, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=FAtKZwln1fU
49. 【年金】2025年金改正 基礎年金底上げ案 今国会で成立へ【社労士解説】 - YouTube, 6月 1, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=T57egra2-Tc