新しい時代のための年金制度へ
少子高齢化、働き方の多様化、そして「人生100年時代」の到来。 日本の社会が大きく変化する中で、公的年金制度もまた、未来を見据えた大きな一歩を踏み出します。 2025年改正法案は、誰もが働き方に応じて公平に保障され、安心して老後を迎えられる社会を目指すための重要な改革です。
1. 保障の輪を広げる:短時間労働者への適用拡大
これまで厚生年金に加入できなかった多くの方が、新たに制度の対象となります。特に「106万円の壁」を意識して就業調整をしていた方々が、働き方に応じた保障を受けられるようになります。
新たに厚生年金に加入
(推計)
企業規模要件の段階的廃止
~2022
501人~
2022.10~
101人~
2024.10~
51人~
最終的に
全企業へ
さらに、これまで適用が除外されていた個人事業所の非適用業種(農業、理美容、飲食など)も解消され、より多くの人が保障の対象となります。
2. 働き続ける意欲を応援
65歳以降も働きながら年金を受け取る方の収入基準が緩和されます。これにより、年金の支給停止を気にせず、より柔軟に働くことが可能になります。
基準額の引き上げにより、約20万人が新たに年金全額を受給可能になると試算されています。
3. 公平性を高める遺族年金
遺族厚生年金の男女差を是正し、現代の家族の形に合わせた制度に変わります。子のいない配偶者への給付は、経済的自立への移行期間として5年間の有期給付が基本となります。
男女差の是正
これまで対象外だった夫も、妻と同様の要件で受給可能に。
新たな支援措置
有期給付への移行を支えるため、「有期給付加算」や「死亡時分割」制度が創設されます。
受給要件にあった年収850万円の上限も撤廃され、より多くの人が対象となります。
4. 能力に応じた負担と給付へ
高所得者の標準報酬月額の上限が引き上げられます。これは、負担能力に応じた公平な保険料負担を求めるとともに、将来の年金給付を手厚くするための措置です。
報酬が高い方は保険料が増加しますが、その分、将来受け取る年金額も増額されます。
5. 将来の年金を守るための仕組み
年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するための重要な措置が検討されています。特に、国民年金(基礎年金)の給付水準の低下を抑える仕組みが法案に盛り込まれました。
基礎年金の「底上げ措置」
厚生年金の積立金を活用し、基礎年金の給付額の目減りを抑制する期間を短縮することを目指します。これにより、基礎年金が主たる収入源となる自営業者や非正規雇用者などの将来の年金水準が改善されることが期待されます。
マクロ経済スライド調整期間のイメージ
基礎年金
厚生年金
調整期間を一致させることで、基礎年金の早期安定化を図ります。(2029年の財政検証で検討)
6. 個人の選択肢を広げるiDeCo
公的年金に加えて、個人の自助努力による資産形成の重要性が高まっています。iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入可能年齢が引き上げられ、より長く老後に備えることができるようになります。
現行
60歳未満
改正後
70歳未満
改革のロードマップ:施行時期一覧
今回の年金制度改革は、段階的に施行されます。主な項目のスケジュールは以下の通りです。
-
’26
在職老齢年金の見直し
令和8年4月 -
’27
標準報酬月額上限の引上げ (段階開始)
令和9年9月 -
’28
遺族年金・加給年金の見直し
令和10年4月 -
’35
短時間労働者の企業規模要件撤廃完了
令和17年10月