Make 調査レポート
1. 基本情報
- ツール名: Make (旧 Integromat)
- ツールの読み方: メイク
- 開発元: Celonis (Make部門)
- 公式サイト: https://www.make.com/
- 関連リンク:
- ドキュメント: https://www.make.com/en/help
- レビューサイト: G2 | Capterra | ITreview
- カテゴリ: ワークフロー自動化
- 概要: Makeは、アプリ、サービス、システムを数回のクリックで統合できるビジュアルオートメーションプラットフォームです。単純なタスクから複雑なエンタープライズワークフローまで、ドラッグ&ドロップのインターフェースで直感的に構築できます。以前は「Integromat」として知られていました。
2. 目的と主な利用シーン
- 解決する課題:
- 異なるSaaS間のデータの分断(サイロ化)の解消。
- 反復的な手作業(データ入力、通知、ファイル移動など)の削減。
- 開発リソースを使わずにカスタムバックエンドロジックやAPI連携を構築したいニーズへの対応。
- 想定利用者:
- ノーコード/ローコード開発者
- マーケティング担当者(リード管理、SNS自動化)
- eコマース運営者(注文処理、在庫管理)
- スタートアップおよびSMB(業務効率化)
- 利用シーン:
- リード管理: Facebook Lead Adsで獲得したリードをGoogleスプレッドシートに追加し、Slackで営業チームに通知、Mailchimpでウェルカムメールを送信する。
- eコマース: Shopifyで注文が入ったら、Xeroで請求書を作成し、Googleドライブに保存する。
- コンテンツ投稿: WordPressの新しい投稿を自動的にTwitter、LinkedIn、Facebookページにシェアする。
- APIバックエンド: Webhookを受け取り、データを加工してデータベースに保存し、レスポンスを返す簡易APIサーバーとして利用する。
3. 主要機能
- ビジュアルシナリオエディタ: キャンバス上でバブル状のモジュールを繋ぎ合わせ、データの流れを視覚的に設計できる。
- 1600以上のアプリ連携: 主要なSaaS(Google, Slack, Salesforce, HubSpotなど)のアプリが事前定義されている。
- HTTP/Webhookモジュール: 専用アプリがないサービスでも、REST/SOAP APIを直接呼び出して連携可能。
- RouterとFilter: 条件に基づいて処理を分岐させたり、特定のデータのみを通過させるフィルタリング機能。
- Data Store: シナリオ間でデータを永続化・共有するための簡易データベース機能。
- Iterator / Aggregator: 配列データを個別の項目に分解して処理したり、逆に複数のデータを一つにまとめたりする機能。
- Error Handling: エラー発生時にリトライしたり、別の処理ルートに流したりする高度な例外処理設定(Ignore, Rollback, Commit, Break)。
4. 特徴・強み (Pros)
- 圧倒的な視覚的操作性: 処理の流れが左から右へアニメーションで可視化され、データの動きを直感的に理解しやすい。実行履歴も視覚的にデバッグ可能。
- 高い柔軟性と拡張性: 「JSON/XMLのパース」や「正規表現」、「配列操作」などの関数が充実しており、プログラミングに近いロジックをノーコードで組める。
- コストパフォーマンス: Zapierと比較して、同等の処理量でもコストが抑えられる傾向にある(特に大量のデータを扱う場合)。
- リアルタイム実行: Webhookを使用することで、イベント発生と同時に即座にシナリオを実行できる。
5. 弱み・注意点 (Cons)
- 学習コスト: Zapierのような直線的な「トリガー→アクション」だけのツールに比べ、機能が多岐にわたるため、使いこなすにはデータ構造やAPIの知識がある程度必要になる。
- オペレーション消費: 複雑なシナリオを作ると、1回の実行で多数の「オペレーション(処理単位)」を消費するため、見積もりより早くプラン上限に達することがある。
- 日本語対応: UIは英語ベースであり(一部翻訳が進んでいるが)、ドキュメントも英語が中心。
6. 料金プラン
| プラン名 | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Free | 無料 | 1,000 Ops/月, 2アクティブシナリオ, 最小実行間隔15分 |
| Core | $9/月〜 | 10,000 Ops/月〜, 無制限シナリオ, 最小実行間隔1分 |
| Pro | $16/月〜 | 10,000 Ops/月〜, フルテキスト検索実行, カスタム変数, 優先実行 |
| Teams | $29/月〜 | チーム管理機能, 複数ユーザー, ロール設定 |
| Enterprise | 要問い合わせ | エンタープライズセキュリティ, SSO, 専任サポート |
- 課金体系: 月間の「オペレーション数(Ops)」に基づく。データ転送量(MB)にも一部制限あり。
- 無料トライアル: Freeプランは期限なしで利用可能。
7. 導入実績・事例
- 導入企業: Meta, Spotify, Heineken, Zalando, Uberなど、世界中の大手企業やスタートアップで利用されている。
- 導入事例:
- Fintech企業: 顧客オンボーディングプロセスを自動化し、手作業を90%削減。
- Eコマース: 注文処理から配送手配、顧客通知までを完全自動化し、人的ミスをゼロに。
- 対象業界: Eコマース、マーケティング代理店、SaaS開発、金融など多岐にわたる。
8. サポート体制
- ドキュメント: Make Help Center に詳細なマニュアル、チュートリアル、ビデオガイドがある(主に英語)。
- コミュニティ: Make Community は非常に活発で、ユーザー同士の助け合いやエキスパートによる回答が得られる。
- 公式サポート: チケット制のサポートデスクを提供。プランによって優先度が異なる。Coreプラン以上で優先サポートあり。
9. エコシステムと連携
9.1 API・外部サービス連携
- API: Make APIを利用して、シナリオの管理、実行、ユーザー管理などをプログラムから操作可能。
- 外部サービス連携: 1600以上のアプリに加え、汎用的なHTTP, Webhook, SOAP, JSONモジュールを駆使することで、API公開されているあらゆるサービスと連携可能。
9.2 技術スタックとの相性
| 技術スタック | 相性 | メリット・推奨理由 | 懸念点・注意点 |
|---|---|---|---|
| Node.js / Express | ◎ | Webhook経由でバックエンド処理をオフロード可能 | 認証周りの実装が必要 |
| Python (Django/FastAPI) | ◎ | データ処理パイプラインの一部として連携しやすい | 大量データの転送にはコストがかかる場合あり |
| React / Next.js | ◯ | フォーム送信先や簡易APIとして利用可能 | クライアントサイドからの直接呼び出しはCORSやAPIキー管理に注意 |
| NoCode (Bubble/Webflow) | ◎ | ネイティブ連携やWebhookでバックエンド機能を補完 | 特になし |
10. セキュリティとコンプライアンス
- 認証: SSO (Single Sign-On) 対応 (Teamsプラン以上)。2段階認証 (2FA) は全プランで利用可能。
- データ管理: データの暗号化(AES-256)、EUまたはUSリージョンの選択が可能(Enterprise)。
- 準拠規格: ISO 27001, SOC 2 Type 2, GDPR準拠。
11. 操作性 (UI/UX) と学習コスト
- UI/UX: モダンで洗練されたUI。シナリオエディタはズームイン・アウトが可能で、大規模なワークフローも全体を俯瞰しやすい。ドラッグ&ドロップで直感的に操作できる。
- 学習コスト: 初歩的な連携は簡単だが、Iterator/Aggregatorや複雑な関数を使いこなすには「プログラミング的思考」が必要となり、中級者向けといえる。
12. ベストプラクティス
- 効果的な活用法 (Modern Practices):
- Webhookの活用: Polling(定期確認)ではなくWebhook(即時通知)を使うことで、即時実行を実現しつつオペレーション消費を節約する。
- エラーハンドリングの実装: “Break”ディレクティブを使用して、API一時エラー時に自動リトライを行う設定を入れる。
- モジュール化: 巨大なシナリオを作る代わりに、機能を分割して別のシナリオとして呼び出す(HTTP Request等で連携)。
- 陥りやすい罠 (Antipatterns):
- 無限ループ: Webhookトリガーと更新アクションを適切にフィルタリングせずに繋ぐと、無限ループが発生しオペレーションを大量消費する。
- 過剰なポーリング: 更新頻度の低いサービスに対して短い間隔(1分など)でポーリング設定を行うと、何もなくてもオペレーションを消費してしまう。
13. ユーザーの声(レビュー分析)
- 調査対象: G2, Capterra, ITreview
- 総合評価: 4.7/5.0 (G2) - ユーザー満足度は非常に高い。
- ポジティブな評価:
- 「視覚的にロジックを組めるのが最高。何が起きているか一目瞭然でデバッグもしやすい」
- 「Zapierより安くて高機能。複雑な条件分岐ができるので乗り換えて正解だった」
- 「APIさえあれば何でも繋げられる柔軟性が素晴らしい」
- ネガティブな評価 / 改善要望:
- 「サポートのレスポンスが遅いことがある。特に無料・下位プランの場合」
- 「エラーログが少し読みづらく、深い階層のデータエラー原因特定に時間がかかる場合がある」
- 「初心者には少し難しすぎるかもしれない。学習曲線がある」
- 特徴的なユースケース:
- 「自社SaaSのプロトタイプバックエンドとしてMakeを使用し、MVP開発期間を劇的に短縮した」
14. 直近半年のアップデート情報
- 2025-12-15: Enterprise Features強化: 監査ログの詳細化と、より細かい権限管理機能がリリースされた。
- 2025-10-14: AI Assistant Beta終了: 初期のAI Assistant Betaプログラムが終了し、次世代AI機能への移行期間に入った。
- 2025-09-10: 新リージョン追加: アジア太平洋地域(APAC)でのパフォーマンス向上のため、新しいデータセンターオプションが追加された。
- 2025-08-22: 認定試験の改定: Make認定パートナー向けの資格試験プログラムが更新され、最新機能に対応したカリキュラムが追加された。
(出典: Make Release Notes, Make Help Center)
15. 類似ツールとの比較
15.1 機能比較表 (星取表)
| 機能カテゴリ | 機能項目 | 本ツール (Make) | Zapier | n8n | Workato |
|---|---|---|---|---|---|
| 基本機能 | 連携アプリ数 | ◯ 1600+ |
◎ 8000+ |
△ 1000+ |
◯ 1000+ |
| 開発機能 | 複雑なロジック | ◎ 視覚的で柔軟 |
△ 直線的 |
◎ コード記述可 |
◎ エンタープライズ級 |
| 運用 | コスト | ◯ 安価 |
△ やや高め |
◎ セルフホスト無料 |
× 非常に高額 |
| 非機能要件 | 日本語対応 | △ 一部のみ |
△ 英語中心 |
△ 英語中心 |
◯ 日本法人あり |
15.2 詳細比較
| ツール名 | 特徴 | 強み | 弱み | 選択肢となるケース |
|---|---|---|---|---|
| 本ツール (Make) | 視覚的で柔軟なフロー構築 | 複雑なロジック可視化、コスパ、柔軟性 | 初心者には学習曲線がある | 複雑な分岐やデータ処理が必要な場合。コストを抑えたい場合。 |
| Zapier | 最も有名な簡単自動化ツール | 圧倒的な連携数、初心者でも即座に使える | コストが高い、複雑な処理は苦手 | シンプルな連携を素早く実装したい場合。非エンジニア。 |
| n8n | オープンソース・セルフホスト | データ管理権限、コード(JS)利用の自由度 | サーバー管理の手間(セルフホスト時) | データを自社管理したい場合。エンジニア中心のチーム。 |
| Workato | エンタープライズiPaaS | 強固なセキュリティとガバナンス | 導入コストが非常に高い | 大企業での全社導入。セキュリティ要件が厳しい場合。 |
16. 総評
- 総合的な評価:
- Makeは、機能性、価格、使いやすさのバランスが非常に優れたツールである。特に「視覚的にロジックを組める」という体験は他のツールを凌駕しており、複雑な業務フローを整理・自動化する上で強力な武器となる。
- 推奨されるチームやプロジェクト:
- API連携を活用して業務効率化を図りたいスタートアップやSMB。
- Zapierのコストや機能制限に悩んでいるチーム。
- プロトタイプを素早く作りたいエンジニアやプロダクトマネージャー。
- 選択時のポイント:
- 「簡単な連携だけでいいのか、複雑な処理もしたいのか」が分かれ目。複雑な処理や条件分岐が必要ならMakeが圧倒的に有利。逆に、単に「メールが来たらSlackに通知」程度ならZapierの方が手軽かもしれないが、MakeのFreeプランでも十分カバーできる。