Kiwi TCMS 調査レポート
1. 基本情報
- ツール名: Kiwi TCMS
- ツールの読み方: キウイ ティーシーエムエス
- 開発元: Kiwi TCMS Team
- 公式サイト: https://kiwitcms.org/
- 関連リンク:
- GitHub: https://github.com/kiwitcms/Kiwi
- ドキュメント: https://kiwitcms.readthedocs.io/
- カテゴリ: テスト管理 (Test Management System)
- 概要: Kiwi TCMSは、世界で最も人気のあるオープンソースのテスト管理システムの一つです。Red Hat社内で開発されたNitrateからフォークし、現在は活発なコミュニティによって開発されています。手動テストの管理だけでなく、自動テストフレームワークとの連携、バグトラッカーとの統合機能を提供し、QAプロセスの効率化を支援します。
2. 目的と主な利用シーン
- 解決する課題:
- 商用テスト管理ツールのライセンスコスト削減
- テストケースと実行結果の一元管理
- 自動テスト結果の可視化と集約
- 想定利用者:
- オープンソースを好む開発チームやQAチーム
- セキュリティ要件によりオンプレミス運用が必須な組織
- 予算が限られているスタートアップやプロジェクト
- 利用シーン:
- 手動テスト管理: テスト計画の作成、ケースの記述、実行結果の記録。
- 自動テスト統合: CI/CDパイプラインからテスト結果を自動送信し、Kiwi TCMS上でレポートを確認。
- バグ追跡: テスト失敗時にJiraやGitHub Issuesに自動的にバグを起票。
3. 主要機能
- テスト管理: テストプラン、テストケース、テストラン(実行)の階層管理。
- 自動化統合: JUnit, TestNG, Pytest, Robot Frameworkなど多数のフレームワーク用プラグインを提供。
- バグトラッカー連携: Jira, GitHub, GitLab, Bugzilla, Redmine, Mantisなどと双方向連携。
- レポート機能: テスト実行の進捗、合格率、バグ検出状況などを可視化するダッシュボードとレポート。
- API: JSON-RPCおよびXML-RPC APIを提供し、外部システムとの連携や自動化が容易。
- アクセスコントロール: ユーザー、グループ、権限の詳細な設定が可能。
4. 開始手順・セットアップ
- 前提条件:
- DockerおよびDocker Composeがインストールされていること。
- インストール/導入:
# 最新のDockerイメージを取得 docker pull pub.kiwitcms.eu/kiwitcms/kiwiGitHubリポジトリから
docker-compose.ymlを使用して起動するのが一般的です。 - 初期設定:
- 初回起動時にデータベースのマイグレーションが実行されます。
- 管理者アカウントを作成し、ログインします。
- クイックスタート:
- DockerでKiwi TCMSを起動。
- ブラウザでアクセスし、ログイン。
- 「New Test Plan」を作成し、テストケースを追加して実行を開始。
5. 特徴・強み (Pros)
- オープンソースとコスト: 完全なオープンソースであり、ライセンス費用なしで全機能を利用可能(セルフホストの場合)。
- 強力な統合機能: 多くのバグトラッカーや自動化フレームワークと標準で連携でき、エコシステムが充実している。
- 柔軟なカスタマイズ性: Python/Djangoベースであり、必要に応じてソースコードレベルでのカスタマイズが可能。
- コンテナファースト: Dockerでの運用が前提となっており、デプロイやアップグレードが容易。
6. 弱み・注意点 (Cons)
- 日本語対応: 公式には日本語UIが提供されておらず、利用には英語の知識が必要(コミュニティによる翻訳活動はあるが不完全な場合がある)。
- UI/UX: モダンなSaaSツール(Qaseなど)と比較すると、UIがやや質実剛健で「管理ツール」的な堅さがある。
- 運用コスト: セルフホスト(Self-Support)版の場合、サーバーの管理やバックアップは自前で行う必要がある。
7. 料金プラン
| プラン名 | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Self Support | 無料 | Dockerイメージ利用。全機能利用可。サポートなし。 |
| Self Support (Sub) | $25/月 | タグ付きリリースへのアクセス、広告非表示。 |
| Private Tenant | $75/月 | SaaS版。サーバー管理不要、バックアップ、サポート付き。 |
| Enterprise | $600/月 | オンプレミスまたはプライベートクラウド。SSO、プレミアム機能。 |
- 課金体系: SaaS版は月額固定(テナント単位)。Self Support版は基本無料。
- 無料トライアル: SaaS版のデモサイト等は特になし(Dockerで手元で試すのが基本)。
8. 導入実績・事例
- 導入企業: Red Hat, Mozilla (Open Source Award受賞), その他多数のオープンソースプロジェクトや企業で使用されている。
- 導入事例:
- 大規模なオープンソースプロジェクトでの品質管理基盤として採用。
- 予算制約のあるスタートアップ企業でのQAプロセス構築。
- 対象業界: ソフトウェア開発全般、特にLinux系やOSS界隈での利用が多い。
9. サポート体制
- ドキュメント: Read the Docsで詳細なドキュメントが公開されている(英語)。
- コミュニティ: GitHub IssuesやStack Overflow、Discordなどで活発なコミュニティが存在。
- 公式サポート: 有料サブスクリプション契約者向けにメールサポートを提供。
10. エコシステムと連携
10.1 API・外部サービス連携
- API: JSON-RPC APIが充実しており、ほぼ全ての操作をプログラムから実行可能。
- 外部サービス連携:
- Issue Tracker: Jira, GitHub, GitLab, Redmine, Bugzilla
- Auth: GitHub, Google, GitLabなどのOAuth認証(Enterprise/SaaS)
10.2 技術スタックとの相性
| 技術スタック | 相性 | メリット・推奨理由 | 懸念点・注意点 |
|---|---|---|---|
| Python | ◎ | 本体がPython製であり、Pythonクライアントライブラリも充実 | 特になし |
| Java / JUnit | ◯ | プラグイン経由で結果を取り込み可能 | 設定が必要 |
| JavaScript / Cypress | ◯ | サードパーティ製のプラグインやスクリプトで連携 | 公式プラグインの状況を確認推奨 |
11. セキュリティとコンプライアンス
- 認証: Djangoの認証システムに加え、Enterprise版ではKerberos, LDAP, OAuth2に対応。
- データ管理: データベース(PostgreSQL)はユーザー管理下(セルフホストの場合)。GDPR準拠(SaaS版)。
- 準拠規格: エンタープライズ版は Red Hat UBI 9 ベースでセキュリティ強化されている。
12. 操作性 (UI/UX) と学習コスト
- UI/UX: Patternflyを採用しており、統一感のあるデザインだが、機能が多く画面遷移は多め。
- 学習コスト: 一般的なTCMSの概念(Plan, Case, Run)を理解していれば難しくないが、設定項目が多いため管理者には学習が必要。
13. ベストプラクティス
- 効果的な活用法:
- Docker Composeを使用した手軽な構築と運用。
- テスト自動化の結果をAPI経由で集約し、日々のビルド品質をダッシュボードで監視する。
- 陥りやすい罠:
- アップグレードを怠るとデータベースのマイグレーションが大変になる場合があるため、こまめな更新を推奨。
14. ユーザーの声(レビュー分析)
- 総合評価: GitHubスター数 1.2k以上、Docker Hubでのプル数200万以上と高い人気を誇る。
- ポジティブな評価:
- 「無料でこれだけの機能が使えるのは素晴らしい」
- 「APIが強力で自動化パイプラインに組み込みやすい」
- ネガティブな評価 / 改善要望:
- 「日本語化されていないのが日本の現場では辛い」
- 「ドキュメントは多いが、欲しい情報に辿り着くのが難しいことがある」
15. 直近半年のアップデート情報
- 2026-01-28: Kiwi TCMS 15.3 - 依存ライブラリの更新、バグ修正、パフォーマンス改善。
- 2025年後半: 定期的なリリースが行われており、セキュリティパッチの適用やUIの微調整、プラグインの互換性向上が進められている。
(出典: GitHub Releases)
16. 類似ツールとの比較
16.1 機能比較表 (星取表)
| 機能カテゴリ | 機能項目 | Kiwi TCMS | TestRail | Qase |
|---|---|---|---|---|
| 基本機能 | テスト管理 | ◎ | ◎ | ◎ |
| コスト | 無料プラン | ◎ 全機能無料(OSS) |
× | ◯ 制限あり |
| 拡張性 | API/プラグイン | ◎ | ◯ | ◎ |
| 非機能 | 日本語対応 | × | × | × |
16.2 詳細比較
| ツール名 | 特徴 | 強み | 弱み | 選択肢となるケース |
|---|---|---|---|---|
| Kiwi TCMS | オープンソース | コスト、カスタマイズ性、オンプレミス | 日本語なし、運用管理が必要 | コストを抑えたい、技術力がある、オンプレ必須の場合 |
| TestRail | 商用スタンダード | 使いやすさ、サポート、Jira連携 | コスト、SaaSメイン | 予算があり、標準的なサポートと使いやすさを求める場合 |
| Qase | モダンSaaS | UI/UX、AI機能、高速 | 日本語なし、歴史が浅い | 最新のUI体験とAI機能を重視する場合 |
17. 総評
- 総合的な評価: Kiwi TCMSは、オープンソースのテスト管理ツールとして最高峰の完成度を誇ります。無料で利用できるにもかかわらず、商用ツールに匹敵する機能と強力な連携機能を持っています。特にエンジニア主導の組織や、コストを重視するプロジェクトにおいては、第一の選択肢となるでしょう。
- 推奨されるチームやプロジェクト:
- 開発者やQAエンジニアがDockerなどの技術に明るいチーム。
- スタートアップや、ライセンス費を節約したいプロジェクト。
- 選択時のポイント:
- サーバーの運用管理コストと、商用ツールのライセンスコストを比較検討すること。
- 日本語UIが必須でないことを確認すること。