HSP3 調査レポート
1. 基本情報
- ツール名: HSP3 (Hot Soup Processor 3)
- ツールの読み方: エイチエスピースリー / ホットスーププロセッサ
- 開発元: ONION software (おにたま)
- 公式サイト: https://hsp.tv/
- 関連リンク:
- GitHub: https://github.com/onitama/OpenHSP
- ドキュメント: https://hsp.tv/make/hsp3.html
- カテゴリ: 開発者ツール
- 概要: 1997年から開発が続けられている日本製のプログラミング言語です。BASICに似た簡単な文法で、Windowsアプリや2D/3Dゲームを誰でも手軽に作成・配布できることを目指して設計されています。
2. 目的と主な利用シーン
- 解決する課題:
- プログラミング学習の初期段階における「環境構築の難しさ」と「文法の複雑さ」の解消。
- Windows用の小規模なユーティリティツールやゲームを短時間で作成したいというニーズ。
- 作成したソフトを手軽に配布可能な形式(EXEファイル)にしたいという要望。
- 想定利用者:
- プログラミング初心者(小中学生〜大人)。
- 趣味でゲームやツールを作るホビープログラマー。
- プログラミング教育を行う教育機関や指導者。
- 利用シーン:
- 学習・教育: 「子どもIT未来塾」などのワークショップでのプログラミング体験教材として。
- インディーゲーム開発: 2DシューティングやRPG、ノベルゲームなどの個人製作。
- 業務効率化ツール: ファイル整理や自動操作など、特定の業務を補助する小規模ツールの自作。
3. 主要機能
- GUIアプリケーション作成: ボタン、入力ボックス、ウィンドウ表示などを数行のコマンドで実装可能。
- 2D描画機能: 高速なスプライト描画、画像読み込み、アニメーション表示を標準サポート。
- HGIMG4 (3D機能): 3Dモデル(.gpb)の表示、物理演算、シェーダー利用が可能な3Dゲームエンジンを同梱。
- HSP3Dish: Android, iOS, WebGL (HTML5), Linux向けに変換・出力するためのマルチプラットフォームランタイム。
- EXEファイル生成: 依存ランタイムのインストールを必要としない、単体動作可能な実行ファイルを作成可能。
- COM/DLL連携: Windows APIの呼び出しや、Excelなどの外部アプリケーション操作が可能。
4. 開始手順・セットアップ
- 前提条件:
- OS: Windows 10/11 (推奨)
- アカウント作成: 不要
- インストール/導入: 公式サイトからインストーラー版またはZIP版をダウンロードして実行・解凍するのみ。
- 初期設定:
- 特になし(解凍後、
hsed3.exeを起動すれば開発開始可能)。
- 特になし(解凍後、
- クイックスタート:
- エディタ (
hsed3.exe) を起動。 - 以下のコードを入力。
mes "Hello World!" button "OK", *exit stop *exit end F5キーを押して実行。ウィンドウが表示される。
- エディタ (
5. 特徴・強み (Pros)
- 圧倒的な導入ハードルの低さ: 環境構築でつまづく要素がほぼなく、日本語の親切なマニュアルが同梱されている。
- 配布の容易さ: コンパイルしたEXEファイルは他のPCでもそのまま動作するため、友人に配ったりネットで公開したりしやすい。
- 豊富なユーザー資産: 30年近い歴史の中で蓄積された大量のサンプルコード、プラグイン、ユーザーのノウハウがネット上に存在する。
6. 弱み・注意点 (Cons)
- 言語仕様の独自性: BASICライクな文法や
goto中心の制御構造は、現代的な言語(Python, JavaScript等)とは異なるため、応用が効きにくい面がある。 - グローバル展開の弱さ: 日本語話者向けに特化しているため、海外の最新技術情報やライブラリを取り込むハードルが高い。
- 大規模開発への不向き: 名前空間の管理や型システムが緩いため、コード規模が大きくなると保守が難しくなる傾向がある。
7. 料金プラン
| プラン名 | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| HSP3 フルセット | 無料 | 機能制限なし、商用利用可、ソースコード改変可(ライセンス準拠) |
- 課金体系: 完全無料
- 無料トライアル: 該当なし(最初から全機能利用可能)
8. 導入実績・事例
- 導入企業: 具体的な企業名は公開されていないが、多くの個人開発者や同人サークルで利用されている。
- 導入事例:
- 「箱庭えくすぷろーらもあ」: HSP3で開発され、SteamやNintendo Switch(移植)で発売されたアクションRPG。
- プログラミング教育: 「子どもIT未来塾」や「CoderDojo」の一部などで、入門用言語として採用。
- 対象業界: インディーゲーム業界、教育産業、個人のツール開発。
9. サポート体制
- ドキュメント: 公式サイトに詳細なリファレンス、講座、サンプルが網羅されている。
- コミュニティ: 「HSP掲示板」等のユーザーコミュニティが活発で、初心者からの質問にも親切に回答が得られる文化がある。
- 公式サポート: 基本的にコミュニティベースだが、不具合報告などは掲示板やGitHubで受け付けている。
10. エコシステムと連携
10.1 API・外部サービス連携
- API: 標準でHTTP通信機能を持っており、Web APIを叩くツールを作成可能。
- 外部サービス連携: Arduino等のハードウェア制御モジュールや、Steamworks連携プラグインなどが存在する。
10.2 技術スタックとの相性
| 技術スタック | 相性 | メリット・推奨理由 | 懸念点・注意点 |
|---|---|---|---|
| Visual Studio Code | ◎ | 拡張機能によりシンタックスハイライト等が利用可能。標準エディタより快適。 | デバッグ機能などの完全な統合は限定的。 |
| Windows API | ◎ | DLL呼び出し機能により、OSの深部機能を直接利用可能。 | セキュリティソフトに誤検知されるリスクがある。 |
| Excel (COM) | ◯ | COMオートメーションで帳票作成ツール等が作れる。 | 実行環境にExcelが必要。 |
11. セキュリティとコンプライアンス
- 認証: ツール自体に認証機能はない。作成したアプリへの実装は開発者次第。
- データ管理: ローカルファイル操作が基本。暗号化プラグイン等を利用可能。
- 準拠規格: 特に明示なし。作成されたEXEファイルにはデジタル署名を付与することが推奨される(誤検知回避のため)。
12. 操作性 (UI/UX) と学習コスト
- UI/UX: 標準エディタはシンプルでメモ帳に近い感覚。F1キーでヘルプが出るなど初心者への配慮が行き届いている。
- 学習コスト: 極めて低い。プログラミングの概念(変数、条件分岐、ループ)を学ぶための最初のステップとして最適化されている。
13. ベストプラクティス
- 効果的な活用法 (Modern Practices):
- モジュール機能の活用:
module命令を使って変数のスコープを限定し、再利用性を高める。 - HSP3Dishの利用: 最初からマルチプラットフォームを意識して記述することで、スマホやWebへの展開を容易にする。
- モジュール機能の活用:
- 陥りやすい罠 (Antipatterns):
- Gotoの多用: スパゲッティコードになりやすいため、可能な限り
repeat-loopや関数呼び出しを利用する。 - グローバル変数の乱用: すべての変数がデフォルトでグローバルなため、命名規則で管理しないとバグの温床になる。
- Gotoの多用: スパゲッティコードになりやすいため、可能な限り
14. ユーザーの声(レビュー分析)
- 調査対象: Vector, X(Twitter), 技術ブログ
- 総合評価: 長年のユーザーからは「実家のような安心感」「プログラミングの原点」として愛されている。
- ポジティブな評価:
- 「書きたいと思ったその瞬間にウィンドウが出せるスピード感が最高。」
- 「小学生の頃にHSPに出会ったおかげでエンジニアになれた。」
- 「面倒な環境構築なしに配布用EXEが作れるのは唯一無二。」
- ネガティブな評価 / 改善要望:
- 「今から覚えるならPythonやUnityの方が将来性があるのでは。」
- 「オブジェクト指向的な書き方が独特で、他の言語からの移行だと戸惑う。」
- 特徴的なユースケース:
- 業務中のちょっとしたファイル操作自動化ツールを、休憩時間にササッと作って配布する。
15. 直近半年のアップデート情報
- 2026-01-28: 開発者「おにたま」氏のインタビュー記事が公開。HSP3の30年の歴史と3.7の展望について語られている。
- 2025-09-05: HSP3.7 正式リリース。標準機能の更新、HSP3Dishの機能拡充、HSPTV素材の追加などが行われた。
(出典: HSPTV!)
16. 類似ツールとの比較
16.1 機能比較表 (星取表)
| 機能カテゴリ | 機能項目 | HSP3 | Python | Scratch | Unity |
|---|---|---|---|---|---|
| 基本機能 | 日本語対応 | ◎ 完全対応 |
△ 英語ベース |
◎ 完全対応 |
△ 英語ベース |
| 配布 | EXE作成 | ◎ 標準機能 |
△ 別途ツール要 |
× Webメイン |
◯ ビルド時間長 |
| 開発手法 | コード記述 | ◯ テキスト |
◯ テキスト |
× ビジュアル |
◯ テキスト(C#) |
| 学習 | 難易度 | 低 入門に最適 |
中 環境構築が壁 |
極低 ブロック |
高 機能多すぎ |
16.2 詳細比較
| ツール名 | 特徴 | 強み | 弱み | 選択肢となるケース |
|---|---|---|---|---|
| HSP3 | 導入が世界一簡単なテキスト言語。 | 環境構築不要、即EXE化、日本語情報。 | 独自文法、海外での通用度。 | プログラミング超初心者、小規模なWindowsツール自作。 |
| Python | AI・データ分析の標準言語。 | ライブラリが最強、就職に有利。 | GUIアプリの配布が面倒。 | 将来エンジニアを目指す、データ処理をしたい場合。 |
| Scratch | ブロックを積むビジュアル言語。 | タイピング不要、論理的思考の学習。 | 実用ツール作成には不向き。 | キーボード操作に慣れていない子供の入門用。 |
| Unity | プロ御用達のゲームエンジン。 | 高品質な3D/2Dゲームが作れる。 | 学習コストが高くPCスペックも必要。 | 本格的なゲーム開発者を目指す場合。 |
17. 総評
- 総合的な評価: HSP3は、最新の技術トレンドとは異なる独自の進化を遂げていますが、「誰でも簡単にコンピュータを操れる」というBASIC時代の精神を現代に残す貴重なツールです。プログラミングの楽しさを知るための入り口として、また実用的な小規模ツールを素早く作る手段として、依然として高い価値を持っています。
- 推奨されるチームやプロジェクト:
- プログラミング初学者向けの教育カリキュラム。
- 個人の趣味開発や、プロトタイピング。
- 非エンジニアが業務改善ツールを自作する場合。
- 選択時のポイント: 「配布のしやすさ」と「日本語での安心感」を重視する場合はHSP3一択です。逆に、将来的なエンジニア就職や大規模開発を見据えるなら、PythonやUnityへのステップアップも視野に入れると良いでしょう。