AGENTIC STAR 調査レポート
1. 基本情報
- ツール名: AGENTIC STAR(エージェンティック・スター)
- 開発元: ソフトバンク株式会社 (SoftBank Corp.)
- 公式サイト: https://www.softbank.jp/biz/services/ai/agentic-star/
- カテゴリ: 自律型AIエージェント
- 概要: ユーザーが設定した業務ゴールを理解し、自らプランニング・判断・行動を行う次世代の自律型AIプラットフォームです。SaaSとして提供され、企業の業務自動化や生産性向上を支援します。
2. 目的と主な利用シーン
- 解決する課題: 従来のAIチャットボットでは難しかった、複雑な工程を含む業務の自動化、部門やシステムを横断した業務連携、AI活用におけるセキュリティとガバナンスの確保。
- 主な利用者: 企業のDX推進担当者、企画・マーケティング部門、システム開発部門、一般のビジネスパーソン。
- 利用シーン:
- 市場調査から競合分析、提案資料の作成までの一連のプロセス自動化。
- システム開発における要件定義書の作成(事例収集、要件整理、フロー図作成)。
- テキスト指示からの動画やアプリケーションの自動生成。
3. 主要機能
- 自律的なタスク遂行: ゴールを設定するだけで、AIが自律的にサブタスクへの分解、計画立案、実行、進捗管理を行います。
- マルチエージェント連携: 検索、資料作成、データ分析など、特定のスキルを持った複数の専門エージェントが協調してタスクを遂行します。
- MCP (Model Context Protocol) 対応: AIが外部データやツールと接続するためのオープン標準「MCP」に対応しており、社内システムやSaaSとの連携が容易です。
- 作業レポート作成: AIが実行した判断や操作の履歴をレポートとして出力し、プロセスの透明性を担保します。
- 長期記憶とパーソナライズ: ユーザーとの過去のやり取りや業務履歴を学習し、個々のユーザーや組織の傾向に合わせた支援を行います。
4. 特徴・強み (Pros)
- 法人利用に特化したセキュリティ: チャット単位で独立した仮想環境が提供され、データ漏洩や他システムへの影響を防ぐ堅牢なセキュリティ構造を持っています。
- 豊富なツール連携: Web検索、文書作成、表計算、プレゼンテーション作成など、80種類以上のツールを標準で装備しており、導入後すぐに高度な業務を行えます。
- 国内企業によるサポート: ソフトバンクによる日本語でのサポート体制があり、日本の商習慣やセキュリティ基準に適合しています。
- 利用促進のための分析機能: 管理者向けの利用状況分析や、ユーザーへのフォローアップメール機能など、組織へのAI定着を支援する機能を備えています。
5. 弱み・注意点 (Cons)
- 提供モデルの段階的リリース: 2025年12月時点ではSaaSモデルのみの提供であり、外部接続モデルや開発基盤提供モデルは2026年3月の提供予定です。
- 価格の透明性: Webサイト上で料金プランが公開されておらず、問い合わせが必要であるため、導入コストの試算に手間がかかる可能性があります。
- 実績の少なさ: 2025年12月にリリースされたばかりの製品であるため、長期的な運用実績やユーザーレビューがまだ少ない点には注意が必要です。
6. 料金プラン
詳細な料金体系は公開されておらず、個別見積もりとなります。
- SaaSモデル: ブラウザから利用できる標準モデル(2025年12月提供開始)。
- カスタマイズモデル: 顧客の専用環境に構築するモデル。
- 無料トライアル: 公式サイトに明記なし(問い合わせが必要)。
7. 導入実績・事例
- ソフトバンク社内: 自社のSE本部などで先行導入され、提案資料作成や要件定義などの業務で活用されています。
- 公開された外部企業の導入事例は、リリース直後のため現時点では限定的です。
8. サポート体制
- ドキュメント: 公式サイトに機能紹介や活用ステップの解説があります。
- 公式サポート: 法人コンシェルや問い合わせフォームを通じたサポートが提供されています。
- 導入支援: DX定着化支援などのコンサルティングサービス(別メニュー)と組み合わせた支援も期待できます。
9. 連携機能 (API・インテグレーション)
- MCP対応: Model Context Protocolを用いた柔軟なシステム連携が最大の特徴です。
- 外部サービス連携: 2026年3月提供予定の「外部接続モデル」により、CRM、BIツール、チャットツールなどの既存業務システムとのシームレスな連携が可能になります。
10. セキュリティとコンプライアンス
- データ管理: 顧客データは学習に利用されない(オプトアウトなどの規定による)運用が想定されますが、詳細は規約の確認が必要です。
- 分離環境: コンテナ技術等を用いていると推測される「独立した仮想環境」により、テナント間のデータ分離が徹底されています。
- ガバナンス機能: ガードレール設定、監査ログ取得、ユーザー承認フローなど、企業統治に必要な管理機能を備えています。
11. 操作性 (UI/UX) と学習コスト
- UI/UX: チャット形式のインターフェースで、自然言語で指示を出せるため、直感的に操作可能です。
- 学習コスト: AIに「ゴール」を適切に伝えるプロンプトエンジニアリングのスキルは一定程度必要ですが、AI側からのヒアリング機能などが補助します。
12. ユーザーの声(レビュー分析)
- 調査対象: 公式発表、プレスリリース、SNS(X等)
- 現状: 2025年12月11日のリリース直後であるため、一般ユーザーによる詳細なレビューはまだ出揃っていません。
- 期待される声: 「資料作成の時間が大幅に短縮できた」「要件定義のたたき台作成が楽になった」といった業務効率化の効果が期待されています。
13. 直近半年のアップデート情報
- 2025-12-11 (リリース): AGENTIC STAR の提供開始。SaaSモデルおよびカスタマイズモデルをローンチ。
- 今後の予定 (2026-03): 外部接続モデル、開発基盤提供モデルの提供開始予定。
14. 類似ツールとの比較
- Microsoft Copilot Studio: Microsoft 365環境との統合に強みを持ちますが、AGENTIC STARはより「自律的なタスク実行」と「独立したツール連携」に焦点を当てています。
- Devin (Cognition): ソフトウェアエンジニアリングに特化した自律型エージェントですが、AGENTIC STARはビジネス全般(資料作成、調査など)をカバーする汎用性があります。
- Salesforce Agentforce: CRMデータ(Salesforce)を中心としたエージェント構築に強みがありますが、AGENTIC STARは特定のSaaSに依存しない中立的なプラットフォームとしての性質が強いです。
15. 総評
- 総合的な評価: 日本のエンタープライズ環境に適合した、セキュリティとガバナンス重視の自律型AIプラットフォームとして期待大です。特にMCPへの早期対応は評価でき、将来的な拡張性が担保されています。
- 推奨されるチーム: セキュリティ要件が厳しい大企業、定型業務だけでなく非定型の調査・制作業務が多い企画・マーケティング部門。
- 選択時のポイント: 既存のマイクロソフト製品やSalesforce製品への依存度と、独自のエージェント構築ニーズ(MCP連携など)のバランスで判断すると良いでしょう。