act (nektos/act) 調査レポート

開発元: nektos
カテゴリ: DevOps

GitHub Actionsのワークフローをローカル環境で実行できるコマンドラインツール。Dockerを使用してローカルでCI/CDパイプラインをシミュレートする。

総合評価
85点
基準点70点からの評価
オープンソース
OSS
無料プラン
あり
最低価格
無料
対象ユーザー
ソフトウェアエンジニアDevOpsエンジニアOSSメンテナ
更新頻度
🆕 最新情報: 2026年1月にv0.2.84をリリース。安定性と互換性が向上。

📋 評価の詳細

👍 加点項目

  • +5 完全無料でGitHub Actionsのローカル実行環境を提供
  • +5 開発サイクルの大幅な短縮(プッシュ不要でテスト可能)
  • +5 活発なオープンソースコミュニティと頻繁なアップデート

👎 減点項目

  • -3 GitHubホステッドランナーとの完全な互換性はない(一部機能制限あり)
  • -2 Docker環境のセットアップとリソースが必要
総評: GitHub Actionsを利用する開発者にとって必須級のツール。完全な互換性はないものの、開発効率を劇的に向上させる。

act (nektos/act) 調査レポート

1. 基本情報

  • ツール名: act (nektos/act)
  • ツールの読み方: アクト
  • 開発元: nektos (コミュニティ主導のOSS)
  • 公式サイト: https://nektosact.com/
  • 関連リンク:
  • カテゴリ: DevOps / CI/CD
  • 概要: GitHub Actionsのワークフロー定義ファイル(.github/workflows)を読み込み、Dockerコンテナを使用してローカル環境で実行するコマンドラインツール。「Think globally, act locally」を掲げ、クラウドへのプッシュなしでCI/CDパイプラインのテストを可能にする。

2. 目的と主な利用シーン

  • 解決する課題:
    • GitHub Actionsの動作確認のために、修正のたびにコミット・プッシュを行う手間と時間の無駄。
    • 「コミット→プッシュ→CI失敗→修正」という長いフィードバックループ。
    • Makefile等のローカルタスクランナーとCI設定の二重管理。
  • 想定利用者:
    • GitHub Actionsを利用してCI/CDパイプラインを構築するすべての開発者。
    • CIのデバッグに時間を取られているエンジニア。
  • 利用シーン:
    • CIワークフローのローカルデバッグ: シンタックスエラーやスクリプトの動作をプッシュ前に手元で確認。
    • ローカルタスクランナー: Makefileの代わりにGitHub Actionsの定義を使ってビルドやテストを実行。
    • クリーンな環境でのテスト: 依存関係が含まれたDockerコンテナ上でテストを実行し、「自分のマシンでは動く」問題を排除。

3. 主要機能

  • ワークフローのローカル実行: .github/workflows/ 内のYAMLファイルを解析し、Docker APIを通じてジョブを実行。
  • イベントトリガーのシミュレーション: pushpull_request などのGitHubイベントをローカルで発火させてワークフローを実行。
  • アーティファクトの利用: アクション間でのデータの受け渡しやアーティファクトの保存・利用をサポート。
  • シークレット管理: ローカルの .secrets ファイルを通じて、APIキーなどの機密情報を安全に注入可能。
  • プラットフォーム指定: -P オプションにより、ジョブを実行するDockerイメージ(Ubuntuなど)をカスタマイズ可能。
  • ドライラン: 実際の実行を行わずに、どのジョブが実行されるかを確認する機能(act -n)。
  • 特定のジョブのみ実行: ワークフロー全体ではなく、特定のジョブを指定して実行可能(act -j job_name)。

4. 開始手順・セットアップ

  • 前提条件:
    • Docker Engine (または Docker Desktop) がインストールされ、実行されていること。
    • Git がインストールされていること。
  • インストール/導入:
    # macOS (Homebrew)
    brew install act
    
    # Windows (Chocolatey)
    choco install act-cli
    
    # Linux (Curl)
    curl -s https://raw.githubusercontent.com/nektos/act/master/install.sh | sudo bash
    
  • 初期設定:
    • 初回実行時にデフォルトのDockerイメージサイズ(Large/Medium/Micro)を選択するプロンプトが表示される。
    • .actrc ファイルにデフォルトの引数を設定可能。
  • クイックスタート:
    # リポジトリのルートディレクトリで実行(デフォルトですべてのpushイベントを実行)
    act
    
    # 特定のイベント(例: pull_request)をトリガーとして実行
    act pull_request
    

5. 特徴・強み (Pros)

  • 高速なフィードバックループ: コード変更からテスト結果確認までの時間を数分〜数十分から数秒〜数分に短縮できる。コミット履歴を汚さずに試行錯誤が可能。
  • GitHub Actionsとの互換性: 標準のYAML構文をそのまま解釈するため、特別な設定ファイルを追加で書く必要がない。
  • 環境の一貫性: Dockerコンテナ上で実行されるため、ローカル環境の汚れや依存関係の差異に影響されにくい。
  • クロスプラットフォーム: Windows, Mac, Linuxのいずれでも動作(Dockerが必要)。

6. 弱み・注意点 (Cons)

  • 完全な互換性ではない: GitHubホステッドランナーの環境を完全に再現できるわけではない。特にプリインストールされているソフトウェアの違いがある。
  • Docker依存: 実行にはDocker Engineが必要であり、Docker Desktop等のライセンスやリソース消費(CPU/メモリ)の影響を受ける。
  • Docker in Dockerの複雑さ: ワークフロー内でさらにDockerを使用する場合(Serviceコンテナなど)、設定が複雑になりトラブルが発生しやすい。
  • Apple Silicon (M1/M2/M3) の課題: 一部のx86_64ベースのDockerイメージを使用する際、エミュレーションによりパフォーマンスが低下する場合がある。

7. 料金プラン

プラン名 料金 主な特徴
OSS (MIT License) 無料 すべての機能を無制限に利用可能。
  • 課金体系: 完全無料(オープンソース)。
  • 無料トライアル: なし(最初から全機能利用可能)。

8. 導入実績・事例

  • 導入企業: 特定の企業導入リストは公開されていないが、GitHub Star数68,000超(2026年1月)という数字が広範な利用を示している。
  • 導入事例:
    • OSSプロジェクト: コントリビューションガイドラインに「PR作成前に act でテストを通すこと」を推奨するプロジェクトが多数存在。
    • 個人開発者: プライベートリポジトリの無料枠(Actions実行時間)を節約するためにローカルでテストを完結させる。
  • 対象業界: Web開発、クラウドネイティブ開発、DevOpsを採用している全業界。

9. サポート体制

  • ドキュメント: User Guide が整備されており、インストールから高度な設定まで網羅されている。
  • コミュニティ: GitHub Discussions と Issues が非常に活発。ユーザー同士の助け合いや開発者からのレスポンスがある。
  • 公式サポート: 企業による有償サポートはない。コミュニティサポートのみ。

10. エコシステムと連携

10.1 API・外部サービス連携

  • API: 外部から制御するための公式Web APIはないが、CLIツールとしてスクリプトから呼び出し可能。
  • 外部サービス連携:
    • Docker: 実行基盤として必須。
    • GitHub: APIトークンを使用することで、GitHub上のリポジトリ情報やパッケージと連携可能。
    • VS Code: 公式拡張機能ではないが、act を統合するサードパーティ製拡張機能が存在する。

10.2 技術スタックとの相性

技術スタック 相性 メリット・推奨理由 懸念点・注意点
Node.js / JS / TS 軽量なコンテナで高速に動作。 特になし
Python Python環境のセットアップが容易。 特になし
Go コンパイル・テストが高速。 特になし
iOS / macOS × DockerはLinuxコンテナがベースのため動作不可。 macOS固有の機能(Xcode等)は利用できない。
Windows Docker上でWindowsコンテナを使う必要があり設定が複雑。 基本的にはLinuxベースのワークフロー向け。

11. セキュリティとコンプライアンス

  • 認証: GitHub Personal Access Token (PAT) を -s GITHUB_TOKEN=... で渡すことでプライベートリポジトリにアクセス可能。
  • データ管理: すべてのデータはローカルマシン内で完結し、外部サーバーへの送信は行われない(GitHub APIを叩く場合を除く)。
  • 準拠規格: OSSのため特定の認証は取得していないが、コードは公開されており透明性が高い。

12. 操作性 (UI/UX) と学習コスト

  • UI/UX: シンプルなCLI。実行結果はGitHub ActionsのウェブUIのログに似た形式でカラー出力され、視認性が高い。
  • 学習コスト: DockerとGitHub Actionsの基本知識があれば、追加の学習コストは非常に低い。数個のコマンドオプションを覚えるだけで使える。

13. ベストプラクティス

  • 効果的な活用法 (Modern Practices):
    • 軽量イメージの利用: -P ubuntu-latest=node:16-buster-slim のように、必要なツールだけが入った軽量Dockerイメージを指定することで実行速度を上げる。
    • Makeでのラップ: Makefiletest: act のように記述し、開発者がコマンド一発で実行できるようにする。
  • 陥りやすい罠 (Antipatterns):
    • シークレットのコミット: .secrets ファイルを誤ってGitにコミットしてしまう。必ず .gitignore に追加すること。
    • 過度な信頼: 「act で動いたから本番でも動く」と思い込み、GitHub上での最終確認を怠る。環境差異による失敗はあり得る。

14. ユーザーの声(レビュー分析)

  • 調査対象: GitHub Issues, Twitter (X), Tech Blogs (Qiita, Zenn, Dev.to)
  • 総合評価: 非常に好評。特に「待ち時間」に不満を持つ開発者から熱烈に支持されている。
  • ポジティブな評価:
    • 「もう “fix ci”, “retry” といったゴミコミットを量産しなくて済むのが最高。」
    • 「飛行機の中など、オフラインでもCIの一部を動かせるのが便利。」
    • 「デバッグサイクルが圧倒的に速くなった。」
  • ネガティブな評価 / 改善要望:
    • 「GitHubホステッドランナーに入っているツールがなくてコケることがある(Imageの差異)。」
    • 「M1 MacだとDockerの挙動が遅かったり、アーキテクチャ違いで動かないアクションがある。」
    • services (DBなど) の立ち上げでトラブルが起きがち。」
  • 特徴的なユースケース:
    • CIの設定ファイルを「ローカル開発環境のセットアップスクリプト」として兼用し、新規参画者の環境構築を自動化する。

15. 直近半年のアップデート情報

  • 2026-01-01 (v0.2.84): メンテナンスリリース。依存パッケージのセキュリティアップデートとバグ修正。
  • 2025-12-01 (v0.2.83): Mergify設定の更新など、開発フロー周辺の改善。
  • 2025-10-XX (v0.2.82): 依存関係のアップデートによる安定性向上。
  • 2025-09-XX (v0.2.81): Matrix展開ロジックの修正や、ステップコンテナのワークディレクトリ処理の修正。
  • 2025-08-XX (v0.2.80): テスト環境のベースイメージ更新(buster -> bookworm)。

(出典: GitHub Releases)

16. 類似ツールとの比較

16.1 機能比較表 (星取表)

機能カテゴリ 機能項目 act GitHub Actions (Cloud) CircleCI CLI Dagger
実行環境 ローカル実行
Dockerで再現
×
不可

専用コンテナ

どこでも動作
互換性 Actions構文
ネイティブ対応

本家
×
CircleCI構文
×
独自/CUE/SDK
セットアップ 容易さ
Installのみ

不要

Token設定等

SDK学習必要
コスト 無料利用
完全無料

制限あり

制限あり

OSS版あり

16.2 詳細比較

ツール名 特徴 強み 弱み 選択肢となるケース
act GitHub Actionsローカルランナー Actionsの資産をそのまま使える。無料。 完全な環境再現は困難。Docker必須。 GitHub Actionsを利用しており、ローカルで高速にフィードバックを得たい場合。
GitHub Actions (Cloud) 本家クラウド実行環境 完全な互換性。セットアップ不要。並列実行能力。 フィードバックが遅い。デバッグがしにくい。 最終的な動作確認、本番デプロイ、重い処理。
CircleCI CLI CircleCI用ローカルツール 強力なデバッグ機能とCircleCIとの整合性。 GitHub Actionsとは互換性がない。 CircleCIをメインのCIとして利用している場合。
Dagger ポータブルCI/CDエンジン 特定のCIツールに依存せず、Go/Python等で記述可能。 独自の学習が必要。Actions資産は直接使えない。 ベンダーロックインを避け、CIパイプライン自体をコードとして管理・ポータブルにしたい場合。

17. 総評

  • 総合的な評価: act は、GitHub Actionsを中心とした現代の開発ワークフローにおいて、開発者体験(DX)を大きく向上させる重要なピースである。クラウド上のCIの結果を待つという「無駄な時間」を排除できる点は、個人の生産性だけでなくチーム全体の速度向上に寄与する。
  • 推奨されるチームやプロジェクト:
    • GitHub ActionsをメインのCI/CDとして採用しているすべてのプロジェクト。
    • CIパイプラインの修正や保守を行う頻度が高いDevOpsチーム。
  • 選択時のポイント:
    • 「ローカルでの事前検証用」と割り切り、最終的な品質保証はクラウド上のGitHub Actionsで行うという運用設計ができるかどうかが鍵となる。完全な互換性を求めすぎると、Docker環境の調整に時間を取られるため注意が必要。