A2A Protocol 調査レポート
1. 基本情報
- ツール名: A2A Protocol (Agent to Agent Protocol)
- ツールの読み方: エーツーエー プロトコル
- 開発元: The Linux Foundation (コミュニティ主導)
- 公式サイト: https://a2a-protocol.org/
- 関連リンク:
- GitHub: https://github.com/a2aproject/A2A
- ドキュメント: https://a2a-protocol.org/
- カテゴリ: AI開発基盤 / プロトコル
- 概要: 異なるプラットフォームやフレームワーク(LangGraph, CrewAI, Semantic Kernelなど)で構築されたAIエージェント同士が、相互に通信し、タスクを委任したり連携したりするためのユニバーサルな分散型標準プロトコル。
2. 目的と主な利用シーン
- 解決する課題:
- 異なるフレームワークで作られたエージェント同士が通信できない「サイロ化」の解消。
- エージェントが他のエージェントにタスクを依頼する際の標準的な手段の欠如。
- 想定利用者:
- AIエージェント開発者
- AIプラットフォーム提供者
- 複雑なワークフローを構築したいシステムエンジニア
- 利用シーン:
- 複雑なタスクの委任: ユーザーのエージェントが、専門的な能力を持つ外部のエージェント(例:旅行予約エージェント)にタスクを委任する。
- マルチエージェントシステム: 異なる組織や環境にあるエージェント同士が協調して問題を解決する。
- エージェント間交渉: タスクの実行条件やパラメータについてエージェント同士で交渉を行う。
3. 主要機能
- 相互運用性 (Interoperability): LangGraph, CrewAI, Semantic Kernel, カスタム実装など、異なる基盤のエージェントを接続可能。
- 複雑なワークフロー (Complex Workflows): エージェントがサブタスクを委任し、情報を交換し、アクションを調整して、単一のエージェントでは解決できない問題を解決。
- セキュアで不透明 (Secure & Opaque): 内部メモリやツール、独自のロジックを共有することなく相互作用でき、セキュリティと知的財産を保護。
- Agent Discovery:
/.well-known/agent-cardを通じてエージェントの能力やエンドポイントを発見する仕組み。 - 標準API:
sendMessage(同期/非同期メッセージ送信) やsendMessageStream(ストリーミング応答) などの統一インターフェース。
4. 開始手順・セットアップ
- 前提条件:
- Go, Python, JavaScript, Java, C#/.NET などの対応言語環境。
- HTTPサーバーを公開できる環境(エージェント間通信のため)。
- 導入 (Pythonの場合):
# パッケージのインストール (例) pip install a2a-python - 初期設定:
- エージェントの機能を記述した Agent Card を作成し、公開サーバーに配置。
- クイックスタート:
- SDKを使用してサーバーを立ち上げ、他のエージェントからのリクエストを待ち受ける設定を行う。詳細は各言語のGitHubリポジトリのサンプルを参照。
5. 特徴・強み (Pros)
- MCPとの補完関係: MCP (Model Context Protocol) が「エージェントとツール」の通信を担うのに対し、A2Aは「エージェントとエージェント」の通信を担う。両者を組み合わせることで強力なシステムが構築可能。
- プラットフォーム非依存: 特定のベンダーやフレームワークにロックインされない、真にオープンな標準。
- 分散型アーキテクチャ: 中央集権的なサーバーを介さず、インターネットの仕組み(HTTP/REST)を利用して直接通信が可能。
- プライバシー保護: 内部プロンプトや思考プロセスを隠蔽したまま、結果だけをやり取りできる。
6. 弱み・注意点 (Cons)
- 普及の段階: 比較的新しいプロトコルであり、すべての主要なエージェントフレームワークがネイティブ対応しているわけではない(SDKによる対応が必要)。
- ネットワーク要件: エージェント同士が通信するためには、相互にアクセス可能なネットワーク環境が必要(ファイアウォール設定など)。
- 認証・認可の複雑さ: 異なる組織間のエージェント連携では、信頼関係の構築と認証設定(OpenID Connectなど)が必要になる。
7. 料金プラン
| プラン名 | 料金 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| OSS | 無料 | Apache License 2.0の下で自由に利用・改変が可能 |
- 課金体系: プロトコル自体は無料。エージェントをホスティングするインフラコストのみ発生。
8. 導入実績・事例
- The Linux Foundation: プロジェクトのホスト組織として管理・推進。
- Google (ADK): GoogleのAgent Development Kit (ADK) との連携や、IBM ACPの統合などが進められている。
- Cisco agntcy: A2Aを利用したエージェントフレームワークを提供。
9. サポート体制
- ドキュメント: 公式サイト に詳細な仕様とガイドがある。
- コミュニティ: GitHub DiscussionsやIssueを通じて開発者コミュニティと交流可能。
- 公式サポート: The Linux Foundationプロジェクトとしてのコミュニティサポートが中心。
10. エコシステムと連携
10.1 API・外部サービス連携
- API: RESTful APIベースの標準仕様。JSON形式でメッセージをやり取りする。
- 外部サービス連携: エージェント自体がツールとして外部API(Stripe, Slackなど)を叩くことはMCPの領域だが、A2Aを使えば「Slack操作が得意なエージェント」に依頼する形で連携可能。
10.2 技術スタックとの相性
| 技術スタック | 相性 | メリット・推奨理由 | 懸念点・注意点 |
|---|---|---|---|
| Python | ◎ | 公式SDKあり。AI開発の主流言語であり親和性高い。 | 特になし |
| Go | ◎ | 公式SDKあり。高パフォーマンスなエージェントサーバーに最適。 | 特になし |
| JavaScript/TS | ◎ | 公式SDKあり。Webアプリケーションとの統合が容易。 | 特になし |
| Java / C# | ◯ | 公式SDKあり。エンタープライズ環境での採用に有利。 | 特になし |
11. セキュリティとコンプライアンス
- 認証: OpenID Connect (OIDC) を利用したエージェント間の相互認証をサポート。
- データ管理: エージェント間の通信内容はHTTPSで暗号化されることを想定。内部状態は共有されない。
- 準拠規格: オープンスタンダードとして設計されており、特定の企業の独自規格ではない。
12. 操作性 (UI/UX) と学習コスト
- UI/UX: プロトコルであるため、直接的なUIは存在しない。開発者はSDKを通じて利用する。
- 学習コスト: REST APIやOAuth/OIDCの知識があれば理解しやすい。MCPの概念を知っていれば、その対としての位置付けですぐに理解できる。
13. ベストプラクティス
- 効果的な活用法 (Modern Practices):
- MCPとの併用: ツール利用はMCP、他の自律的判断が必要なタスクはA2Aと使い分ける。
- Agent Cardの整備: 自身の能力を正確に記述したAgent Cardを公開し、他のエージェントから発見されやすくする。
- 陥りやすい罠 (Antipatterns):
- 過剰な分割: 単純な関数呼び出しで済むものを無理にA2Aエージェント化してオーバーヘッドを増やす(「エージェントはツールではない」原則の誤解)。
- 認証の省略: 開発環境以外で認証なしでエージェントを公開すること。
14. ユーザーの声(レビュー分析)
- 調査対象: 技術ブログ、GitHub、SNS
- 総合評価: エージェント間通信の標準化として高い期待が寄せられている。
- ポジティブな評価:
- 「エージェント開発における『ラストワンマイル』である相互運用性を解決する決定打」
- 「MCPとA2Aの組み合わせで、AIエージェントのエコシステムが完成に近づいた」
- 「GoogleやIBMなどの技術が統合されており、信頼性が高い」
- ネガティブな評価 / 改善要望:
- 「まだ仕様が新しく、実装例が少ない」
- 「既存のシステムに組み込む際のベストプラクティスがもっと欲しい」
15. 直近半年のアップデート情報
- 2025年: IBM ACP (Agent Communication Protocol) がA2A Protocolに統合されることが発表。
- 2025年: Cisco agntcyフレームワークでの採用。
- 2026-02: ドキュメントサイトの整備と多言語SDK (Go, Python, JS, Java, .NET) の提供が進む。
(出典: GitHub Repository)
16. 類似ツールとの比較
16.1 機能比較表 (星取表)
| 機能カテゴリ | 機能項目 | A2A Protocol | MCP | 独自API連携 |
|---|---|---|---|---|
| 通信対象 | 相手 | エージェント対エージェント | エージェント対ツール | システム対システム |
| 状態保持 | ステートフル | ◎ マルチターン対話 |
△ 基本ステートレス |
△ 実装次第 |
| 標準化 | 統一規格 | ◎ Linux Foundation |
◎ オープン標準 |
× バラバラ |
| 発見機能 | Discovery | ◎ Agent Card |
◯ サーバー機能 |
× 手動設定 |
16.2 詳細比較
| ツール名 | 特徴 | 強み | 弱み | 選択肢となるケース |
|---|---|---|---|---|
| A2A Protocol | エージェント間通信の標準規格 | 異なるフレームワーク間の壁を越えて連携できる。自律的な交渉や委任が可能。 | 相手もエージェントである必要がある。 | 複数の自律エージェントを連携させて複雑なワークフローを構築する場合。 |
| MCP | エージェントとツールの接続規格 | エージェントに外部データや機能(計算機、DB検索など)を与えるのに最適。 | エージェント同士の複雑な交渉には向かない。 | エージェントに特定の機能(ツール)を持たせたい場合。 |
| LangChain/LangGraph | エージェント構築フレームワーク | エージェントの内部ロジック構築に強力。 | フレームワーク内の連携は得意だが、外部との標準的な接続方法は独自になりがち。 | 単一のエージェントシステムを構築する場合。A2Aと組み合わせて使うのがベスト。 |
17. 総評
- 総合的な評価: A2A Protocolは、これからの「Agentic Web(エージェントが活動するウェブ)」において、TCP/IPやHTTPのような基礎的な役割を果たす重要なプロトコルである。MCPが「手足(ツール)」を標準化したのに対し、A2Aは「言葉(コミュニケーション)」を標準化したと言える。
- 推奨されるチームやプロジェクト:
- 複数の特化型エージェントを連携させてサービスを構築しようとしているチーム。
- 自社のエージェントを外部に公開し、他社のエージェントから利用してもらいたい企業。
- 選択時のポイント:
- 単にツールを使わせたいだけならMCPで十分。
- 「判断」や「交渉」を含めて他のエージェントに任せたいならA2Aを採用すべきである。