次世代アジリティへの航海

スクラムガイド2020とエクスパンションパックの
比較分析から学ぶ、これからのスクラム

なぜ、スクラムは進化し続けるのか?

現代のプロダクト開発は、前例のない変化と不確実性に直面している。

単に「モノを作る」(アウトプット)だけでは不十分。
真の価値(アウトカム)を届けることが、これまで以上に求められている。

この課題に対し、スクラムはどう応答したのでしょうか?

スクラムの進化を象徴する2つの道標

Scrum Guide 2020

本質を追求した、ミニマルな「ルールブック」
普遍的に適用可能なスクラムの核を定義する。

Expansion Pack

現代の課題に応える、オプションの「実践ガイド」
スクラムの精神をより具体的に実践する道を示す。

これらは対立せず、互いを補完する関係です。

この資料から得られること

  • スクラムガイド2020の核心を再確認する
  • エクスパンションパックがもたらす新しい視点を理解する
  • 明日からのあなたのスクラムに活かせるヒントを得る

【第1部】原点回帰:スクラムガイド2020の核心

"The What" - ゲームのルール

自己完結したフレームワーク

スクラムガイド2020は、3つのシンプルな構成要素で定義されます。

スクラムチーム

PO, SM, 開発者からなる「自己管理」チーム

5つのイベント

検査と適応のリズムを生み出す公式な機会

3つの作成物

透明性を最大化し、ゴールへの進捗を可視化する

このミニマリズムが、あらゆる文脈で適用できる強みと、
一方で実践における「経験の空白地帯」を生み出しました。

【第2部】新たな羅針盤:エクスパンションパック

"The How" - 勝利への戦略

最大のパラダイムシフト:アウトプット アウトカム

アウトプット (Output)

作ったモノ

例:ログイン機能をリリースした

アウトカム (Outcome)

もたらされた価値・変化

例:ユーザー登録率が20%向上した

チームが多忙でも価値を生み出せない「ビルドトラップ」からの脱却を目指します。

アウトカムをどう測るか? EBM

証拠に基づく経営 (Evidence-Based Management) を公式に統合。
価値を測定し、改善するための経験的なアプローチです。

CV
現在の価値

UV
未実現の価値

A2I
イノベーション能力

T2M
市場投入までの時間

【第3部】新たな海図:何がどう拡張されたのか?

スクラムチームとプラクティスの進化

プロダクトオーナーの進化

Before: バックログ管理者

価値を最大化する責任を負う

After: 価値戦略家

EBMを用い、プロダクトの事業成功に責任を負う戦略的リーダー

開発者の進化

Before: 開発者

インクリメントを作成する専門家集団

After: プロダクト開発者

コードだけでなく、プロダクトのアウトカムに共同で責任を持つ

スクラムマスターの進化

Before: 真のリーダー

スクラムを確立することでチームと組織に奉仕する

After: 組織変革エージェント

アウトカム主導のマインドセットを組織全体にコーチングする

未来への布石:AIはチームメンバーか?

エクスパンションパックは、AIを潜在的な「チームメンバー」として捉える先進的な視点を提示します。

  • コーディング支援
  • テスト自動化
  • EBMのためのデータ分析
  • 顧客フィードバックのパターン特定

これは単なるツールではなく、
新たな協働の形を模索する問いかけです。

【第4部】目的地へ:明日からの実践

あなたの現場でどう活かすか?

明日から始めるアクションプラン

プロダクトオーナーへ:
次のスプリントで検証したい「アウトカムに繋がる仮説」は何か、チームと話してみよう。

開発者へ:
「この機能は、どんな顧客の価値に繋がるのか?」をプロダクトオーナーに質問してみよう。

スクラムマスターへ:
レトロスペクティブで「どうすれば私たちのチームは、もっと価値(アウトカム)に集中できるか?」を問いかけてみよう。

リーダーが育むべき「土壌」

アウトカム中心のアプローチは、適切な環境があってこそ花開きます。

心理的安全性 + 信頼 + 権限移譲

チームが実験し、失敗から学べる文化を醸成することが、リーダーの最も重要な役割です。

結論:スクラムの未来

エクスパンションパックはルールの変更ではなく、スクラムの成熟の証です。

スクラムは、常に適応的で、経験的、そして価値に焦点を当て続けます。

その進化は、GitHub上の「生きたドキュメント」として、
コミュニティとの継続的な対話の中で作られていきます。

あなたの参加が、スクラムの未来を創ります。