規制、市場、そして農家直送D2Cの未来
2025年6月、メルカリが「米」の出品を全面禁止。消費者と出品者に衝撃が走りました。
健全な「農家直送」の出品者までもが、市場から姿を消す事態に。
この決定の裏には何があったのか?
本資料は、その背景、実態、そして農産物D2Cの未来を解き明かします。
メルカリの決定は、自発的ではなく政府の法改正に対応するものでした。
国民生活安定緊急措置法
米の「高額転売」を禁止
最大で拘禁刑・罰金100万円
→ プラットフォームにとって看過できない法的リスクが発生
規制対象は「転売業者」のはず。しかし、プラットフォームには根本的な課題がありました。
(販売OK)
(販売NG)
課題:両者を大規模・正確に識別するのは不可能。
「農家直送」の偽装が容易なため、リスク回避として個人出品を一律禁止。
転売が横行する完璧な状況(パーフェクト・ストーム)が生まれていました。
価格が前年比 1.5〜2倍 に。
安価な「備蓄米」放出で価格差が拡大。
この 大きな価格差 が、転売の温床となりました。
C2Cプラットフォームの特性が、期せずして裁定取引の場となってしまいました。
小売店で備蓄米を購入
市場価格で出品
価格差が利益に
本来の売買の場が、主要食料品のグレーマーケットへと変貌しました。
核心の問い:禁止以前、出品者に占める農家の割合は?
メルカリは出品者構成を公開しておらず、正確な数字は不明です。
そこで、間接的な証拠から実態を推定します。
2018年の楽天「ラクマ」の調査が、危機以前の健全な市場を知る手がかりになります。
1年間で 4.8倍 に成長
全農産物で取引額最大
一般小売より 75円/kg 安い
示唆: 危機以前、C2Cには大規模で活発な「農家直送」市場が確かに存在しました。
市場には4つの出品者類型が混在し、単純な二元論では語れませんでした。
「農家直送」を掲げる市場の中核。
自家消費の余剰分などを販売。
利ざや目的。農家を装うことも。
「クズ米」等を高品質と偽装。
C2C市場は、大きな魅力とリスクが同居する場でした。
まさに 「米ガチャ」 状態。
この措置は、単なる出品禁止ではなく「市場のリセット」を意味します。
個人・個人事業主
出品禁止
重要な例外
法人
メルカリShopsで販売可能
示唆: 匿名の個人(C2C)から、身元が確かな事業者(B2C)中心のモデルへと移行。
この変化に適応し、成長するための3つの戦略提言です。
主要プラットフォームでの販売継続に不可欠。
複数チャネル(専門EC、自社サイト等)でリスクを分散。
情報開示、トレーサビリティ、認証等で信頼を可視化。
原因: 政府規制と市場混乱が重なり、プラットフォームは一律禁止を選択せざるを得ませんでした。
実態: 転売・悪質業者の急増が健全な市場を崩壊させ、消費者リスクも増大しました。
未来: この「市場のリセット」は、信頼性が問われるD2C新時代への移行を促します。これは強靭なビジネスを築く好機でもあります。
詳細な参考文献は、元の調査報告書をご参照ください。