メルカリ米穀出品禁止の真相

規制、市場、そして農家直送D2Cの未来

なぜ今、この問題を掘り下げるのか?

2025年6月、メルカリが「米」の出品を全面禁止。消費者と出品者に衝撃が走りました。

健全な「農家直送」の出品者までもが、市場から姿を消す事態に。

この決定の裏には何があったのか?

本資料は、その背景、実態、そして農産物D2Cの未来を解き明かします。

Agenda

  • 1
    発端 (The Trigger): なぜ米は出品禁止になったのか?
  • 2
    市場 (The Market): 混乱を招いた経済的背景
  • 3
    実態 (The Reality): 消えた「農家直送」のシェア
  • 4
    未来 (The Future): D2C農産物ECの次の一手

発端(1): 引き金は「政府の規制」

メルカリの決定は、自発的ではなく政府の法改正に対応するものでした。

根拠法

国民生活安定緊急措置法

規制内容

米の「高額転売」を禁止

罰則

最大で拘禁刑・罰金100万円

→ プラットフォームにとって看過できない法的リスクが発生

発端(2): なぜ「正規の農家」まで?

規制対象は「転売業者」のはず。しかし、プラットフォームには根本的な課題がありました。

正規の農家

(販売OK)

VS

転売業者

(販売NG)

課題:両者を大規模・正確に識別するのは不可能。
「農家直送」の偽装が容易なため、リスク回避として個人出品を一律禁止。

市場(1): 規制を招いた「パーフェクト・ストーム」

転売が横行する完璧な状況(パーフェクト・ストーム)が生まれていました。

要因1:米価の異常高騰

価格が前年比 1.5〜2倍 に。

要因2:政府の市場介入

安価な「備蓄米」放出で価格差が拡大。

この 大きな価格差 が、転売の温床となりました。

市場(2): 意図せざる転売エンジン

C2Cプラットフォームの特性が、期せずして裁定取引の場となってしまいました。

安く買う

小売店で備蓄米を購入

メルカリで売る

市場価格で出品

利益を得る

価格差が利益に

本来の売買の場が、主要食料品のグレーマーケットへと変貌しました。

実態(1): 消えた「農家直送」のシェアは?

核心の問い:禁止以前、出品者に占める農家の割合は?

公式データは非公開

メルカリは出品者構成を公開しておらず、正確な数字は不明です。

そこで、間接的な証拠から実態を推定します。

実態(2): ヒントは競合「ラクマ」に

2018年の楽天「ラクマ」の調査が、危機以前の健全な市場を知る手がかりになります。

米の取引額

1年間で 4.8倍 に成長

人気No.1

全農産物で取引額最大

価格メリット

一般小売より 75円/kg 安い

示唆: 危機以前、C2Cには大規模で活発な「農家直送」市場が確かに存在しました。

実態(3): メルカリ米市場の4つの顔

市場には4つの出品者類型が混在し、単純な二元論では語れませんでした。

A: 正規の農家

「農家直送」を掲げる市場の中核。

B: 趣味/余剰分

自家消費の余剰分などを販売。

C: 転売業者

利ざや目的。農家を装うことも。

D: 低品質な販売者

「クズ米」等を高品質と偽装。

実態(4): 消費者の天国と地獄

C2C市場は、大きな魅力とリスクが同居する場でした。

光 (メリット)

  • 魅力的な価格
  • 鮮度・生産者との繋がり
  • 豊富な品種

影 (リスク)

  • 深刻な品質問題
  • 出品者の不透明性
  • 市場の信頼失墜

まさに 「米ガチャ」 状態。

未来(1): 市場のリセットと新たな道

この措置は、単なる出品禁止ではなく「市場のリセット」を意味します。

個人・個人事業主
出品禁止

重要な例外

法人
メルカリShopsで販売可能

示唆: 匿名の個人(C2C)から、身元が確かな事業者(B2C)中心のモデルへと移行。

未来(2): 農業事業者の次の一手

この変化に適応し、成長するための3つの戦略提言です。

1. 事業の公式化 (法人化)

主要プラットフォームでの販売継続に不可欠。

2. チャネルの多様化

複数チャネル(専門EC、自社サイト等)でリスクを分散。

3.「検証可能な信頼」の構築

情報開示、トレーサビリティ、認証等で信頼を可視化。

総括: 危機が促したD2Cの進化

原因: 政府規制と市場混乱が重なり、プラットフォームは一律禁止を選択せざるを得ませんでした。

実態: 転売・悪質業者の急増が健全な市場を崩壊させ、消費者リスクも増大しました。

未来: この「市場のリセット」は、信頼性が問われるD2C新時代への移行を促します。これは強靭なビジネスを築く好機でもあります。


D2Cの成熟化

ご清覧ありがとうございました

詳細な参考文献は、元の調査報告書をご参照ください。