「メタボリックシンドロームの病態生理:その発症機序と加齢との本質的関連性に関する理論的考察」を元に作成
心筋梗塞や脳卒中、2型糖尿病のリスクを著しく高める、
代謝異常の集合体です。
内臓脂肪蓄積は必須項目です。
診断項目 | 基準値 |
---|---|
必須項目 内臓脂肪蓄積 |
ウエスト周囲径 男性 ≥85 cm / 女性 ≥90 cm |
選択項目 (上記に加え2項目以上) |
|
※薬剤治療中も項目に含まれます。
脂肪は単なるエネルギー貯蔵庫ではありません。
特に内臓脂肪は、ホルモンを分泌する
「暴走する内分泌器官」へと変貌します。
肥大化した内臓脂肪は、ホルモン(アディポサイトカイン)の分泌バランスを崩壊させます。
アディポネクチン
インスリン感受性を高め、血管を守る保護的なホルモンが減ってしまう。
TNF-α, PAI-1, etc.
炎症を起こし、血栓を作り、血圧を上げる有害なホルモンが溢れ出す。
一つの原因(内臓脂肪の暴走)が、メタボの各症状を直接引き起こします。
悪玉ホルモンの影響で、血糖値を下げるインスリンが効きにくくなる状態です。
これが、メタボの多様な病態を結びつける中心的なハブとして機能します。
インスリン抵抗性に対する身体の「代償反応」が、事態をさらに悪化させます。
長年インスリンを過剰分泌し続けた膵臓は、やがて疲弊し、機能が低下。
ついに血糖コントロールは破綻し、顕性の2型糖尿病へと移行します。
(高インスリン血症期)
(インスリン分泌低下)
加齢は、メタボのリスクを多角的に、そして強力に加速させます。
筋肉は、血糖値の主要な「受け皿」です。筋肉が減ると、血糖が処理されにくくなり、インスリン抵抗性が悪化します。
筋肉が減ることで、安静時のエネルギー消費も低下。同じ量を食べても脂肪がつきやすくなります。
血管内の糖
筋肉(糖の受け皿)
エネルギーとして消費
加齢で「受け皿」が小さくなると、糖が行き場を失います。
筋肉が少なく、脂肪が多い状態は、破滅的な悪循環を生み出します。
増えた脂肪が、さらに筋肉の分解を促進する
代謝を制御するホルモンも、加齢とともに劇的に変化します。
成長ホルモン低下 → 筋肉減少・脂肪増加
エストロゲン低下 → 内臓脂肪へ再分配
テストステロン低下 → 筋肉減少・内臓脂肪増加
「遺伝」という設計図の上に、長年の「生活習慣」が積み重なります。
問題は、これらの影響が単純な足し算ではないことです。
加齢は体の「ハードウェア」を変化させ、生活習慣の悪影響を何倍にも増幅させます。
高い基礎代謝と豊富な筋肉量で、多少の不摂生は緩衝できる。
代謝も筋肉も落ち、準備万端の身体に悪影響が直撃。深刻な結果に。
病態は静かに、しかし着実に進行します。
これら全てが血管を傷つけ、動脈硬化を促進します。
しかし、後期高齢者では優先順位が変わります。
フレイル(虚弱)な高齢者への厳格なカロリー制限は、筋肉減少(サルコペニア)を加速させ、転倒や寝たきりのリスクを高める可能性があります。
目標は理想的な数値から、「筋力と生活の質の維持」へ。
メタボリックシンドロームは…
生涯にわたる、複雑でダイナミックなプロセスです。
各ライフステージに応じた理解と対策が不可欠です。
本資料は、科学的知見に基づき、メタボリックシンドロームの理解を深めるために作成されました。
出典:「メタボリックシンドロームの病態生理:その発症機序と加齢との本質的関連性に関する理論的考察」
および、関連する厚生労働省、日本老年医学会等の公開資料。