JaCoCoを使いこなす

コードカバレッジの「先」へ進むための技術深掘りとベストプラクティス

JaCoCoとは? - コードカバレッジの重要性

  • テスト実行箇所を「可視化」 Javaコードカバレッジ計測の標準ツールです。
  • 品質向上のための重要指標 テストの穴を見つけ、品質を向上させます。
  • CI/CDへの統合 CI/CDと連携し、コード品質を自動で維持します。

【起】JaCoCoの心臓部:オンザフライ・バイトコードインスツルメンテーション


YourCode.java

コンパイル

YourCode.class
実行時に動的書き換え

JaCoCoはソースコードではなく、Javaバイトコードを直接書き換えて動作。
ビルドを複雑にせず、柔軟な計測を実現します。

【承】何を測っているのか? - 主要なカバレッジメトリクス

行カバレッジ

実行されたコード行数。直感的だが、論理的な網羅性は不十分な場合がある。

分岐カバレッジ (C1)

最重要! `if`等の全経路を網羅したかを示す。論理的な欠陥を発見する鍵。

命令カバレッジ (C0)

実行されたバイトコード命令数。基本単位だが、開発者には直感的ではない。

レポートの解読法 - 色と記号が示す「テストの穴」

  • 緑色: 完全網羅全てのコードが実行済み
  • 黄色: 部分的網羅 ← 要注意!一部のコードが未実行
  • 赤色: 未網羅コードが全く実行されていない
  • 黄色のひし形分岐の網羅が不十分なサイン。`if/else`の片方しか通っていないケースなど。

【転】落とし穴① 精度の問題 - コンパイラが作る「見えないコード」


開発者のコード

コンパイラが変換
(Kotlinコルーチン等)

複雑なバイトコード

JaCoCoはコンパイラが作る「見えないコード」も計測します。
そのため、開発者の直感と反し、カバレッジが不当に低く見えることがあります。

【転】落とし穴② パフォーマンス問題 - 高並行環境での思わぬ罠

通常のテスト

オーバーヘッドは軽微で、一般的に問題になりません。

高並行アプリケーション

複数スレッドが殺到しキャッシュ競合が発生。実行時間が10倍以上に悪化することも。

高負荷システムでは、JaCoCo自体がボトルネックになりうることを認識すべきです。

【結】解決策とベストプラクティス - JaCoCoを賢く使う

1. 正確なレポーティング

Lombok等の自動生成コードを除外し、意味のあるコードのみを計測対象にします。

2. CI/CDへの戦略的統合

カバレッジ率を「品質ゲート」として利用し、品質の低下を自動で防ぎます。

3. 現実的な目標設定

「100%」の幻想を追わず、重要なビジネスロジックに集中します。

モダンな品質管理:「Diff Coverage」という進化

従来の方法

プロジェクト全体のカバレッジを目標。レガシーコードがあると達成困難。

モダンな方法 (推奨)

PRの新規・変更コードのみを対象に。
"Clean as You Code"

新たな技術的負債を防ぎ、品質を漸進的に向上させる、効果的なアプローチです。

チームのための戦略 - 役割別の提言

  • 開発者へ:目標は行カバレッジより「黄色のひし形」の解消。
  • アーキテクトへ:品質ゲートとしてDiff Coverageの導入を主導。
  • QA / SDETへ:カバレッジを計測し、「デッドコード」の発見に活用。

まとめ - 成功への鍵

JaCoCoは強力な味方

成熟し、標準化された堅牢なツール。

ただし特性の理解が必須

コンパイラ依存やパフォーマンス問題などの弱点も。

Diff Coverage分岐カバレッジへの集中が
品質を向上させる鍵です。

ありがとうございました