カリフォルニア米と日本米

安全性の真実をデータで読み解く

はじめに:なぜ比べるのか?

「カリフォルニア米は農薬が多いのでは?」そんな声を聞くことがあります。食の安全に関心が高まる中、私たちは日々口にするお米について、正確な情報に基づいた判断をしたいと考えています。このインフォグラフィックは、カリフォルニア米と日本米の安全性について、農薬、重金属、遺伝子組換えといった複数の視点から、科学的なデータを基に比較・分析し、その実態を分かりやすくお伝えすることを目的としています。

第1部:農薬 – ルールと実際のところ

農薬のルール:日本の基準は?

日本では、食品中の残留農薬を厳しく管理する「ポジティブリスト制度」が導入されています。原則として全ての農薬に残留基準値が設定され、基準値がない農薬はごく微量(一律基準0.01ppm)しか認められません。 アメリカ(カリフォルニア州含む)にも独自の農薬規制がありますが、日本に輸入されるカリフォルニア米は、この日本の厳格な基準を満たす必要があります。

主要農薬の残留基準値比較 (米・玄米, ppm)

農薬名 日本 米国 (参考)
アゾキシストロビン 0.2 5.0
クロルピリホスメチル 0.1 6.0
チオベンカルブ 0.2 0.2
プロパニル 10 10

出典:報告書IV.A.3より。米国の基準は穀粒(Grain)に対するもの。米国の基準値が高い場合、ポストハーベスト使用の有無や食文化の違い(一人当たりの米消費量)などが影響していることがあります。日本市場のカリフォルニア米は日本の基準に従います。

実際の残留は?

日本の農林水産省による国産米の監視調査では、近年、残留基準値を超過した事例は報告されていません。 また、米国FDAの報告でも、国産食品の高い適合率が示されています。 重要なのは、日本で販売されるカリフォルニア米(例:カルローズ米)は、日本の輸入検査システムを通過し、日本の残留農薬基準をクリアしているという点です。

国内検査で基準超えなし

(農林水産省 R5年度 国産米調査)

カリフォルニア州では農薬使用量の減少傾向も報告されており、生産段階での管理も進んでいます。 過去の古いデータや米国内流通品の情報だけを見て「カリフォルニア米は農薬リスクが高い」と判断するのは早計かもしれません。

第2部:気になる物質 - 重金属をデータで比較

お米は土壌からヒ素やカドミウムといった重金属を吸収しやすい性質があります。これらの含有量は産地や品種によって異なります。ここでは、報告書で引用された分析データに基づき比較します。

ヒ素(総ヒ素)の比較

出典:報告書 IV.B.3 表参照 (ng/g = ppb)

このデータでは、検査されたカリフォルニア産カルローズ米の総ヒ素濃度は、日本産白米の平均値と比較して低い傾向が示されています。HBBF(Healthy Babies Bright Futures)の報告でも、カリフォルニア産米は総じて重金属濃度が低い傾向にあると指摘されています。

カドミウムの比較

出典:報告書 IV.B.3 表参照 (ng/g = ppb)

カドミウムに関しても、検査されたカリフォルニア産カルローズ米の濃度は、日本産白米の平均値と比較して大幅に低い値でした。 日本ではカドミウム汚染米対策が進められていますが、産地による違いは依然として見られます。

第3部:遺伝子組換え米(GM米)ってどうなの?

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現在、日米双方の市場に

食用GM米はありません

報告書によると、2024年初頭時点で、カリフォルニア州および米国全体、そして日本においても、食用としての遺伝子組換え米は商業的に栽培されておらず、市場にも流通していません。したがって、消費者が通常のルートでGM米に遭遇する可能性は極めて低いと言えます。

第4部:消費者ができること - 安全な食生活のために

お米の安全性について様々な情報がありますが、日々の食生活で私たち消費者ができることもあります。報告書で推奨されているポイントをいくつかご紹介します。

第5部:まとめ - 結局、どちらが安全?

これまでの分析を踏まえると、「カリフォルニア米は日本米より農薬リスクが高い」と一概に断定することはできません。日本で販売されるカリフォルニア米は日本の厳格な農薬基準をクリアしており、この点では日本米と同様の安全性が確保されていると言えます。むしろ、一部の重金属(ヒ素・カドミウム)については、入手可能なデータ上ではカリフォルニア米(特にカルローズ種)の方が低い傾向にあります。

特徴 カリフォルニア米 (日本市場向け) 日本米
農薬残留リスク 日本の基準値をクリア(輸入検査あり) 国内基準値をクリア(国内監視あり)
ヒ素含有量 (一部データ) 低い傾向 (例: カルローズ米) カルローズ米平均より高い傾向
カドミウム含有量 (一部データ) 大幅に低い傾向 (例: カルローズ米) カルローズ米平均より高い傾向
遺伝子組換え(GM)米 市場に流通なし 市場に流通なし

最終的には、産地だけでなく、栽培方法(有機、特別栽培など)や品種、そして日々の調理法などを総合的に考慮し、バランスの取れた選択をすることが賢明です。